大空と最高僧
□第六話 暖かい人達
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今日、俺はとにかく具合が悪かった。
いや、現在進行形で悪い。
朝から体が重いし、頭はガンガンと殴られるような痛みがある。
今、妖怪の襲撃をうければ、確実に死ぬ自信があるし、そもそも歩くことすら難しいかもしれない。
けれどそんな状態でも、俺は彼らに具合が悪いことを言わなかった。
心配させたくないし、迷惑をかけたくもない。
あと数十分で街に着くらしいから、あと少しの我慢だろう。
「ツナ、大丈夫か?なんかすっげぇ元気ねぇけど…」
悟空さんがじぃっと俺を見つめながら尋ねてきた。
「そうかな?十分元気だよ」
「そうか……?」
うーんと首をかたむけながらじろじろと悟空さんは俺を見つめ続ける。
それにびくびくしながら引きつった笑みを俺は浮かべる。
彼の勘は野性の動物並に凄まじく、それに助けられたこともあれば、また逆のこともあった。
そもそも、この四人は勘が鋭い。
俺が顔に出やすいからとか色々あるだろうけれど、それを差し引いたって鋭いと思う。
案外、悟空さん以外の三人には、ばれているのかもしれない。
それでも何も言わないというのは何かあるのだろうか。
「(ま、気にしたって仕方ないよな…)」
いつのまにか、ジープは街の入口近くに停まっていた。
「(あー……くらくらする…)」
頭はぼーっとして、体はいますぐ服を脱ぎ捨てたいほどに熱を放っている。
歩き始めて数分。
たったの数分だというのに、具合は思った以上に悪化していた。
一応、まともに歩けているのだが、少しでも気を抜けばあっという間に倒れてしまうというほどに状態は悪かった。
宿に着くまでに、はたして自分はちゃんと立っていることができるだろうか。
そんな不安がよぎるほどに。
……考えれば考えるほど、頭が痛くなる。
考えるだけ無駄なのかもしれない。
しばらく歩いていくと、小さな人だかりができている場所があった。
聞こえる話から察するに、喧嘩のようだ。
道端で迷惑極まりない。
興味をそそられたのか、悟空と悟浄さんが人ごみをかきわけて進んでいくのが見えた。
はぁとため息をつく三蔵さんの声が聞こえてくるようだ。
三蔵さんが道端でぶちギレるのはできるだけ避けたいので、俺も人ごみの中に入っていった。
そして、出た場所が悪かった。
ゴンッ
何かに殴られ、俺の意識は遠退いていった。