大空と最高僧

□第七話 迷い迷って
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[Kogaizi side]




桃源郷は西域。
天竺。
その天竺に存在する巨大な城、吠登城。
我が宿敵、玄奘三蔵一行が目指す場所である。
不気味な機械。
多くの妖怪。
様々なものが有り触れるこの城。
それを取り仕切る玉面公主に先ほど呼び出された俺は、少し苛ついていた。
その内容は、自分の仕事に関してのことであった。
その仕事というのも、子供を一人探して連れてこいという、牛魔王の蘇生実験に必要とは思えない、意味のわからないものだ。
母を復活させるには致し方ないこととはいえ、あまり気の進むようなものではない。
資料にと、彼の特徴やら写真やら渡されたが、それを中々開けられずにいた。

「経文探しの次はガキ探しか……どんどん三蔵一行から離されてってるな」
「あぁ……」

自分としては早く奴らと決着をつけたいところなのだが、中々機会には恵まれない。

「ま、そのガキってのをここに連れてくりゃ、三蔵一行の相手もできるようになるかもな」

そうなればいいと、心から思う。




[Tsunayoshi side]




さすが、名のある街なだけあって、キラキラとあちこちが煌めいていた。
煌きすぎて目が痛くなってくるほどだ。
人の混み具合も、今まで通ってきた街とは全然違う。
右を見ても、左を見ても人、人、人。
人で溢れかえっている。
なんというか、俺の世界でいう都心のような感じがした。

「そんなにキョロキョロしてると、迷子になっちゃいますよ?」

俺の後ろを歩いていた八戒さんが微笑みながら俺の横へと並んだ。
さりげなく、混んでいる側に立ってくれているのが紳士って感じだ。
…そういうのは女性にやったほうがいいと思うのだけど。

「そーそ。まぁ、猿みてぇに無駄に走り回ったりしねぇだろうし、心配はしてねぇけどな」
「ガキ扱いすんなッ!!……あッ、三蔵あれ食いたい!!」
「却下だ馬鹿。」

そういいつつ、ハリセンで悟空の頭を叩く。
なんでだよ!と文句が聞こえ、ここに俺が混じっても、無駄に話がこじれるだけだと思い、黙々と進み続けた。
酔いそうなほどの人に驚いてはいるが、それだけだ。
俺はもう子供ではないし、いくらダメツナとはいえ、迷子だなんてそんなベタな事態に陥ることなんてありえない。
もう俺も十四。
社会のことがなんとなくわかってきて、大人と言っても差し支えないくらいの年齢だ。
こんな年齢にもなって迷子なんて恥ずかしすぎるだろう。
そう考えていると、背後から人に押され、前方に体が倒れて転んでしまった。

「うわっ」

咄嗟に手をつき、怪我をすることはなかったが、やはり痛いものは痛い。
うぅと小さくうめきながらすばやく手を払って、立ち上がり辺りを見回すと、見知った四人と一匹の姿はどこにも見当たらなかった。
あの長身の紅い髪や、金糸の目立つ頭を探してみるが、どこにも見当たらない。
まさか……

「俺、迷子ぉぉ!!?」

絶対にならないと思っていたことが起きてしまった。
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