その教師、ドSにつき。

□第2話
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「はぁぁぁ〜」

「なんだいなんだい、その溜息は。辛気臭いねぇ」

「う〜ん……ねぇ、おばあちゃん……神様ってイジワルだね」

「おや、一丁前に悩み事かい?青春だねぇ」

「いや、そうじゃなくってさ……」


おばあちゃんの早とちりな詮索に呆れながらも、さてこれからどうしようかと考える。

あんな二重人格がクラスの担任な上に、この家のすぐ隣に住んでるなんて。

一体どれだけ偶然が重なればこうなる訳?


「そう言えばさ、あの人……おばあちゃんの事、芳江さんって呼んでたけど、どういう知り合いなの?」

「あの人?……あぁ、薫ちゃんの事かい?あの子はね、私の友達の孫なんだよ。
学校の先生やっているらしいんだけど、今度この近くに転任になったって」

「うん……知ってる」

「おや、もしかしておまえの行ってる学校の先生かい?」

「……それどころか、担任なんですけど」

「へぇ!そりゃすごい縁だねぇ」


縁?……縁じゃなくてただの偶然でしょ。

あんな変態エロ教師と縁なんかあって堪るもんですか。


「私、お風呂入って来る」

「あぁ、今日は疲れたろ、早く寝なさい」

「うん、そうする」


着替えを取りに部屋へ戻り、そのままお風呂場へと向かった。





―――……


「ふぁぁ〜良いお湯だった」


お気に入りのリンゴジュースを片手に部屋へ上がった私はドサリとベッドへ腰を下ろす。

しっかし今日は本当に疲れたな……マジメに早く寝よっと。


「あ、リンゴジュース甘くて美味しい……」


紙パックのジュースにストローを挿してチュッと吸い付いた時だった。

ん……?

ぼうっと窓の外を眺めて居れば、明かりが点いたアパートの一室。

あれ……?そういえばこの部屋、空き部屋じゃなかったっけ?

私の部屋の真正面で、しかもやたら隣接してるから今まで人が住んでなくて良かったのに。

……

って?あれ……ちょっと、待てよ。

今まで住んでなくて、人の気配があるって事は。

嫌な予感がした私は立上ってガラリと窓を開ける。

4月とはいえ、まだまだ冷たい夜風が温まった肌を刺激した。


「おっ!」

「うそっ……」


私が窓を開けたと同時に、向こうもガラリと窓を開けた。

一瞬、目を見開いてビックリしたような顔をしたアイツが途端に口元を緩ませる。


「へぇ、お前の部屋そこだったのか」

「せ、先生こそ、……っていうか、近すぎですっ!他の部屋に移動してください」

「あ?なんで俺がいちいち部屋変えなきゃなんねぇんだよ!
つうか、そもそも他の部屋空いてねぇし」

「じゃぁ、せめて真正面が私の部屋だと言う事を意識して下さい!」

「どういう意味だよ」


ギロリと睨むその目つきは、凡そクラスに居る時の先生とは180度人格が違う。

みんながこんな先生を知ったら驚くんだろうなぁ。


「何だよ、ボケーっとして。人の話聞いてんのか」

「ボケてなんかいません!ですから、年頃の女子高校生の部屋が目の前にあるんですから
雨戸閉めるとか、少しは気を使って下さいって事です」

「おいおい、なんで俺が雨戸を閉め切りにしなきゃなんねぇんだよ。
だったらお前の方が閉めりゃ良いだろ?」

「ダメです。ここ閉めちゃったら部屋が暗くなっちゃうもん」

「だったら俺だって同じじゃねぇか。大体、おまえの着替えシーンなんざ見えたって何も感じねぇっつうの」


いかにも面倒くさいとでも言わんばかりにチッと舌打ちをした先生は、溜息を吐いて窓際のベッドに腰掛ける。

悪かったわね!どうせ幼児体型にクマちゃんパンツだわよ!

ぷぅっとむくれた私に、想像通りの反応と言わんばかりの嫌な笑いをする先生。

これ以上付き合っても無駄だと思った私は窓を閉めようとして、その手が固まる。

……見るつもりなんて無かったんだけど。

先生のベッドの上に散らばっている、ソレって。


「おい、なに固まってんだよ」

「そ、そ、ソレ、って……」

「なんだよ?……あぁ、これか。これがどうかしたのか」


震えながら指さした私をじっと睨む。

そして、悪びれもせず、女の人の裸が表紙に載っている……
いわゆるエロ本ってヤツを得意げにペラペラと捲って見せた。


「きっ、教師のくせに、そんなの見てるなんてっ!」

「うるせぇ女だな。教師だろうが何だろうが男ならこういうもん見るのは当たり前なんだよ」

「そ、そんなのウソよ!このエロ教師っ!」

「はっ、何とでも言えよ。おまえみたいなクマパン処女には分かんねぇよ」

「さ、最低―――っ!」


バシンっ!と勢いよく窓とカーテンを閉める。

なに、アイツ!学校では好青年ぶっちゃって、実際はただの変態野郎じゃん。

エロ本抱えて、なーにが当たり前よ。
世の中の男がみんなアンタみたいなエロ男じゃないっつーの。


「あんなのが担任だなんて……サイアク!」


飲みかけのリンゴジュースを一気飲みした私は、そのまま布団に突っ伏した。




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