その教師、ドSにつき。

□第4話
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―――おまえ、可愛いな……


そう言って触れた唇。


先生……

私……先生と、キス……しちゃったんだよね。

あれは、先生にとって日常的な事なの?

私は……私にとっては…… 一大事だったよ、先生……



「あいつは元カノだ。たまたま飲み屋で行き会って話が弾んで、気付いたら勝手について来た」

どうしても気になっていた私の心の中を察したのか、私の頭を撫でながら話してくれた先生。

勝手について来た、って……。それで簡単に家に上げちゃうの?しかもキス迫ってたし。

それって、あの人はまだ先生の事を想っているって事だよね。

ふくれっ面をした私の頬を指で突いて「嫉妬してんのか」って笑った先生。

先生にとって、私は一体どういう存在なんだろう……








「由奈?」

「ねぇ、由奈ってば」

「へっ……?」

「へっ?じゃないわよぅ!さっきからボ〜っとしちゃって、また熱でもあるの?」

「いや……あの……っ」

「心ここに在らず、だね。何に夢中になってるのかな、由奈ちゃんは」

「萌……」


ニヤッと意地悪そうに微笑んだ萌に、何の事か分からず騒ぎ出す菜々子。

やだ……もしかして私、ぼうっとしてた?

先生のこと思い出してたら、つい……

菜々子はともかく、萌は勘が鋭いっていうかなんて言うか。


「へぇ、図星なんだ、由奈。で、お相手は誰なのかなぁ?」

「ねぇ、萌ってば一体何のことよぅ〜!」

「由奈はね、今、恋してるの」

「こ、恋っ!?誰に?ねぇ〜誰よぅ、教えてっ」

「それを今から聞き出すんじゃない。ね、由奈ちゃん」


ニヤっと含み笑いをする萌に「そんな事ないよ!」なんて慌てて首を横に振ったけど。

誤魔化しなんて効く筈もなく、まさに二人から問い詰められようとした時ガラっと開いた教室の戸。

ガタガタと音を立てて皆一斉に席へ着く。

残念そうに顔を見合わせた菜々子と萌も、しぶしぶ席に着いた。

いつもと同じ白衣姿にいつもと同じ顔。

そして……昨日と同じ……唇。

や、やだっ……なんか、ドキドキしてきちゃった、かも。


「おはようございます。では、出席をとります」


清々しい程、爽やか青年顔で出席簿を片手に教壇に立つ先生。

きっと、私のこのドキドキなんて全然知らないんだろうね。

その余裕の顔が何だかちょっと、癪に障るんだけど。

じっと睨み付ける様に見ていた私の目に、バチっと先生の視線が重なった。

うそ……!目、合っちゃった……

思わず伏せる顔。

先生もこっちを見てるのかどうかは分からないけど、出欠を取り始めた先生の声にホッと胸を撫で下ろす。

もう、どうして私一人でこんなに焦ってるんだろう。

早く終わってよっ……そんな気持ちで朝のホームルームが終わるのをじっと堪えていた。




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