空色の姫

□涸轍鮒魚
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「ボクはこの死体を処理しなければなりません。何かと秘密の多い死体なもので....」

それじゃ、失礼します。

私より一回り大きい程しか変わらな背格好のお面の人は軽々と自分の倍近くある再不斬を背負うと瞬身の術で消えた。

あの仮面が頭から離れない。
特に赤色の渦を巻いたような模様が。
見た瞬間に引き寄せられたみたいな、フワフワした感覚に包まれる。

「ソラ?」

サクラの呼ぶ声でハッと我に返った。
どうしたのと取り繕うように返事をすれば、行くわよと言われた。

「う、うん」

カカシ先生を先頭に歩き出そうとした矢先、先生の身体がグラリと傾いた。

「カカシ先生!?」

 * * *

「大丈夫かい?先生!」

と言ったのは綺麗な黒髪の似合う女性。
この人はタズナさんの娘のツナミさん。

「いや…!一週間ほど動けないんです…」

敷かれた布団に入るカカシ先生は少し情けなく見える。
さっき倒れたのは写輪眼のせい、使いすぎたらしく今は身体が動かない状態。
因みに、倒れたカカシ先生を運んだのは依頼人であるタズナさんだ。

「それにしてもさっきのお面の子って何者なのかな?」

サクラが思い出したように口にした疑問に私は反応した。
“お面の子”はやっぱり今でも気になる。

「アレは霧隠れの暗部…追い忍の特殊部隊がつける面だ。彼らは通称死体処理班とも呼ばれ、死体をまるで消すかのごとく処理することでその忍者が生きた痕跡の一切を消すことを任務としている」

忍者の体はその忍の里で染みついた忍術の秘密やチャクラの性質、その体に用いた秘薬の成分など様々なものを語る。
例えばカカシ先生が死んだ場合、写輪眼のような特異体質の秘密は全て調べあげられてしまい…下手をすれば敵に術ごと奪い取られてしまう危険性だってある。

「忍者の死体はあまりにも多くの情報を語ってしまう。つまり“追い忍”とは…里を捨て逃げた“抜け忍”を抹殺し、その死体を完全に消し去ることで、里の秘密が外部に漏れ出してしまうことをガードするスペシャリストなんだ。
音もなく、においもない…それが忍者の最後だ」

何だか寂しい、そう思った。
死んでしまった後も何も残らないことに。
そしてなにより、自分という存在が生きていた証さえ無くなることに。

そんな自分という個体を消して任務に挑むという忍に私はなった。
いや、本当の意味ではなれていない。
だったらなれるのか?私は。
ぐるぐるぐる、と。
今の私では考えても結末が見えない疑問だけが渦巻いた。
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