夢眠

□少女と記憶
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思い出すのはいつも遠くを見つめる淡い薄茶色の瞳。
ひと冬の小さな恋を、ずっと忘れない…。



ねえ、貴方は今…どこにいますか?







雪解け水がさらさらと流れていく森の中、岩でできた小さな洞穴でひとりの少女が蹲っていた。

(…この森を抜けて山をひとつ越えれば…ムーミン谷…)

うとうとと微睡んだ瞼を、少女は素直に閉じた。


「…り、…ナナリー…」

『………。すなふきん…?』

「ふふ、君は本当によく眠るんだな。そろそろ出発するみたいだぜ?」

自分を起こしてくれた緑の帽子の青年は、大きな荷物を背負うとテントから出ていった。


(…あぁ…、これは、わたしの夢…)

青年と旅をしたのは今から3年前のひと冬だけ。当然目の前に青年がいるはずはないので、これが自分の見ている夢なんだと把握する。

(…懐かしい夢だなぁ…)

夢と言うより記憶に近いのかもしれない。
少女が起き上がりテントを出ると、仲間たちはもう荷を纏めて出発の準備をしていた。

少女はシルフ族という旅をしている妖精の一族で、先程の青年…スナフキンは偶然旅の途中に出逢った旅人だ。
しばらくの間旅を共にすることになっていた。

「目は覚めたかい?」

『…んーん、まだ眠たい』

「顔を洗ってくるといい。君のテントは僕が片付けておいてやるよ」

スナフキンにお礼を言い、顔を洗いに行く。
近くにあった湖の畔にしゃがみ覗き込むと、水面には眠たげな自分が写った。
数日前まで死にかけていたというのに、今はすっかりと顔色がいい。
…というのも、少女は旅の途中仲間と逸れた上狼に襲われ大怪我をしていたのだ。そこを助けてくれたのが他でもないスナフキンであった。
彼は重傷の少女を介抱し、近くにいた仲間の元へ送り届けてくれたのだった。



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