海賊
□その男、外科医
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偉大なる航路(グランドライン)に入り特に何をするでもなく他の海賊たちの動向に目を光らせている最中、立ち寄った夏島でそいつを見つけた。
「船長、この島無人島っすよ。人どころか前に人の住んでた跡すらねえもん」
「一応浜の方はベポが調べてますが、成果は得られないと思いますよ」
船長と呼ばれた男は手元の本から目を離さず、それぞれお気に入りの帽子をかぶりお揃いのツナギを着たクルーたち、シャチとペンギンの報告を聞き流す。
「……わかった。ならベポが戻ったら他の奴らも連れて適当に食料でも探しに行け。ログが溜まり次第この島を出る。」
「「了解です」」
船長…、トラファルガー・ローは、クルーたちが出ていくとまた手元の本のページをめくった。
(………つまらねえな……)
ローのため息を知ってか知らずか、その悩みを吹き飛ばすような騒音が廊下から突撃してきた。
…ドタドタドタドタドタドタドタドタばたんっっ!!!!!
「キャプテーーーーーーーーーーーンっっ!!!!!」
「……うるせぇぞベポ」
「…すみません」
すごい勢いで近づいてきた足音に眉を顰め、乱暴に扉を開け入ってきた白熊を睨みつけると熊はしょんぼりと肩を垂れた。
「……で、何の用だ」
あまりにも打たれ弱い熊を気にすることなく続けるローに、熊…、ベポもはっと顔を上げる。
「あのね!浜に人が倒れてたんだ!怪我してるみたいで…」
よく見るとベポは人を抱えていた。
「…ただの遭難者だろ。そんなのいちいち拾ってくるな。」
「すみません…。で、でも!怪我してたら放っておけなくてっ!」
必死に説明しようとするベポに、ローは本を閉じるとため息を吐いた。
「……医務室に運べ。診てやるよ」
その言葉にベポはぱあっと顔を輝かせ慌ただしく出て行った。
……ここでそいつを診たことが、俺の失敗だったのかも知れねえ。
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