海賊
□その男、迷子
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夏島停泊4日目にして、高緒は初の下船を許された。…と言ってもシャチとイルカの監視付きだが。
「俺と船長は用がある。お前たちで高緒をしっかり監視しておけ。」
「高緒!何かあってもこの2人が守ってくれるからね!」
監視2人に指示をするペンギンと高緒に「楽しんで!」と声をかけるベポではかなり雰囲気が違うのだが、高緒はどちらも面白そうに聞いていた。
「…おい」
『なぁに、ロー?』
「金貨はあいつらに預けてある。必要なもんがあれば買ってこい」
ぽん、と頭に手を乗せられながらかけられた言葉に一度きょとんとしたあと高緒は微笑んだ。
『ありがとう』
正直欲しいものなど思い浮かばなかったがローの些細な気遣いが嬉しかった。
「おいなにやってんだよ早く行くぞ!」
船を降りながら叫ぶシャチに苦笑し、高緒も続いた。
すとっと軽い音を立てて地についた足を見て、高緒は大きく深呼吸をする。
「よ…っと。ん?どしたの高緒ちゃん?」
『…久しぶりの地面だから噛み締めてみた』
にこっと笑う高緒に、イルカも「そっか!」と笑顔で肩を叩く。
ちなみに"高緒ちゃん"と呼ぶのはイルカのみで、本人曰く「女の子みたいに美人だから」らしい。
(…本当は、自由に外に出られたことが初めてでちょっと感動してるんだよね)
物心ついてからというものずっと遊郭に閉じ込められていた高緒は、生まれて初めて自分の意思で立った地に喜びを感じていた。
『…行こっか』
二人の仲間を連れ高緒は人生初の冒険へと足を踏み出した。
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