海賊
□その男、妖艶
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ユースタス・キャプテン・キッドに連行され連れてこられた大きな船。
その一室に高緒は閉じ込められていた。
『…これあんまりいい状況じゃないよねぇ…シャチとか怒ってそう…』
「ほら逃げた!言わんこっちゃねえ!!」と喚いているシャチの姿が容易に目に浮かんだ。
(ベポやペンギンは心配してくれそうだなぁ……ローは…)
隈の深い気だるげな目付きが思い起こされた。向けられるのは冷たい眼差し。
そのイメージを、高緒は「嫌だ」と感じた。
『まだ全然信用なんてされてないんだろうけど…それでも「裏切った」みたいに思われるの、やだなぁ…』
なんとなく気分が落ち込み、膝を抱えて頭を乗せた。
丁度そのとき、部屋の扉が開きマスクの男が入ってくる。
「…何か話す気になったか?」
『……。』
(この人もなんか見たことがある…)
たしか漫画の中でキッドの横に立っていた。しかしそれくらいしか記憶にない。
「…質問を変えよう。お前は俺を、知っているか?」
『見覚えはあるけれど名前も知らないよ』
真実を違えず、正直に答える。
真っ直ぐな高緒の目に、当然嘘は感じられなかった。
「………、いいだろう。ならお前のことを聞きたい。名前はなんだ?」
『…高緒』
「では高緒。お前は海兵か?」
『違うよ』
またも迷いなく正直に答える。高緒は直感でこの男に嘘は通じないと確信していた。
(なるべく言いたくなかったけれど…ロー達のこと聞かれたら嘘はつかない方がよさそうだね…)
マスクの男…キラーは、高緒を探るように言葉を選んでいる様子だった。表情がわからない分、高緒にも少し緊張感が走る。
「…では、お前は海賊か?」
『………。』
瞳も見えない相手。そのマスクに空いた穴から視線が繋がると信じて高緒は目線を合わせた。
『……違うかな』
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