暴彼

□弱虫バニー.3
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『……ん…、』

薄く開いたカーテンの隙間から柔らかな夕陽が射し込む。
掬いあげられるように浮上した意識のままにミウは目を覚ました。


『……夕方…?』

ぼんやりする頭で時計を見やると16時半を示す針。
ゆっくりと身体を伸ばし、ふとベッドの脇に置いてあるものに目が向いた。

『これ…』

(制服?)

特徴的な刺繍の入った襟のブレザー…この家の中で何度か目にしたものだ。

こんこん。

『ん?はぁい?』

ノックの音にドアを開けるとそこにはレイジが立っていた。

「…おや、目が覚めていましたか」

『ぇ?…はい、今覚めました…』

レイジの視線が起き抜けで寝癖で跳ねた毛先や着崩れてよれた寝巻きの上を伝う。

「…。先程あなたの制服を用意しました。あなたは本日付けで我々と同じ夜間学校に通っていただきます」

『あ、これですね…って今日から?』

あまりに突然なことでミウは目をぱちくりとさせる。

「ええ。ですから早くそちらに着替えて、そのだらしない身なりを整えてください。」

『ひっ、…ご、ごめんなさい…』

冷たく見下すような視線にミウは身震いする。
レイジはそれを一瞥し、呆れたようなため息をついて出ていった。


『……やっぱり、こわい、なぁ…』

人間をゴミか何かのように見下す視線。この兄弟全員に共通する点だと思った。
ミウはまだ慣れないその視線が恐ろしく、また悲しくて落ち込んでしまう。

(…仲良くは、なれないのかな…わたしは"餌"だもんね…)

餌と仲良くなんてすれば、自分なら情が移って食べられなくなってしまう。
きっと彼らはそんな馬鹿なことはしないだろう。

ミウはため息をつくと綺麗にたたんであった制服を広げた。

『………学校、か…』

実はこれまで、ミウは学校に通ったことがない。
小さい頃から教会で手伝いをし、勉学は教会に通っていた教論の男性にちょこちょこと教わっていた。

(一応一通りのことは分かるつもりだけど…ついていけるかな…?)

ミウは不安を感じながらも制服に袖を通した。

『……?……、ぁわ、これは…』

そして勉強以前の問題につきあたり、慌てて部屋を出ていくのだった。


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