暴彼
□弱虫バニー.4
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「…スバルやシュウ、レイジまで味わったのに…僕たちがまだなんて許せない…そう思うでしょ?テディ」
「あれ、カナトくん〜?何してるのかな♪」
「よおカナト。」
「………。」
廊下でひとり呟いていたカナトに、通りすがったアヤト、ライトが声をかける。
「…何だっていいでしょう。あなた達こそ随分と機嫌がいいみたいですね」
「お前は機嫌悪そうだな?こんなとこでヒステリー起こすんじゃねえぞ」
呆れた顔をするアヤトに、カナトは眉間の皺を深める。
「僕たち、これからバニーちゃんと遊ぼうと思ってね〜。カナトくんもどお?んふふ」
「…!あの子と?
…いいですね、僕も行きます」
こうして三人は少女の部屋へと足を向けた。
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真っ暗な微睡みの中、どこからかくすくすと含み笑いが聞こえてくる。
「んふ、よく眠ってる…可愛いなぁ」
(…?誰だろう)
「…本当に。綺麗な顔です…人形にしたらもっと、素敵だろうな」
(………人形…)
「ばかかお前。んなことしたら血が吸えなくなるじゃねえか」
(……血?…あぁ、そっか…)
『……おなか…すいた、んだ…』
「ん?」
ゆっくりと暗闇から引きずり上げられる。
(…血を、あげなくちゃ…)
「バニーちゃん、起きたのかなぁ?」
『……ライト、くん…?』
重たい瞼が静かに開く。
ミウの瞳に映ったのは興味津々にこちらを覗き込んでくる三つの顔だった。
『…と、カナトくんとアヤトくん…』
「へえ、君の瞳…まるでできたばかりの氷みたいにきらきらしてて、綺麗です」
「お、まじだ。よく見ると変わった目してるなお前」
「あっずるいよふたりとも〜僕にも見せて見せて」
起き抜けに息もかかる距離で美少年…改め吸血鬼の顔が三つ。
(………なんだろう…すごく怖い…)
距離を置きたかったがベッドに横たわるこの状況では不可能だった。
『…ぁ、あの…』
底知れぬ恐怖で声が上擦る。
察したライトが目を細めた。
「どうしたのかなぁ?バニーちゃん♡」
『…ぉ、おはようございます…』
「「「…………。」」」
予測しえなかった間の抜けた返答に三人とも固まる。
一方のミウもこの状況でこれしか言えなかったのかと顔を青ざめさせた。
静まり返った部屋の中、秒針の音だけが規則正しく響く。
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