暴彼

□弱虫バニー.5
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ある日の夜。
晩餐を家族揃って食べなくてはならない日らしく、レイジにスバルを呼んでくるよう頼まれたミウは彼の部屋の前にいた。

(…スバルくん、また棺桶の中かな…)

アヤトの部屋のアイアンメイデンもそうだが、部屋の真ん中に棺があるというのはどうにも不気味で慣れない。

ミウは一度深呼吸して決心してから扉をノックした。

こんこんこん。

『スバルくん、いますかぁ?』

予想通り、無言。
ミウは仕方ない、と心を決め扉を開いた。

『…入りますよぅ?』

部屋の中に主の姿は見当たらず、相変わらず大きな棺だけが置かれている。

(…これは、やっぱり…)

棺にそっと耳を当てると、中から微かな寝息が聞こえてくる。

『…寝てる…けど、起こして連れていかないとレイジさん怒るよね…』

もう一人来ていなかったシュウのことは、ユイが迎えに行っている。長男の扱いに慣れてきているらしいユイの事だからちゃんと連れてくるだろう。…となれば。

(…わたしもちゃんと連れていかなくちゃ…)

むん!とやる気を出し棺を軽く叩く。

とんとん

『スバルくん、起きて…ご飯ですよう』

大きな声の苦手なミウは怒鳴られたくなくてどうしても恐る恐るになってしまう。
もう少し頑張らないとダメかと思案した時、棺の中で身動ぎする気配があった。

(、!よかった起きた…かな?)

安堵した次の瞬間、

ガタンっ!

ぐっ、

『へぁ!?』

ミウは腕を引かれ暗闇に閉じ込められた。

『……っ!?、??』

突然の何も見えない状況に声も出ず混乱する。
すると後ろから腕が伸びてきて抱き締められた。


『ーーーーっ!!、…!!!!』

やはり恐怖に喉が締まり声が出ない。
しかし抱き締められるこの大きな手には覚えがあった。

『………………す、すばる、くん…?』

「…静かにしてろよ?騒いだら殺す。」

殺すと言う言葉に、ミウの身体がぴしりと硬直する。
スバルはミウの首筋に顔を埋めるように擦り寄った。

『…っ、あぅ…くすぐったぃ…』

「………。」

身を捩るミウに何か思案したあと、スバルは少女の耳を甘噛みした。

『ふ、ぁ…っ!』

びくっと小さな身体が大きく跳ねる。
その様子に後ろからくく、っと笑う声が聞こえてきた。

「は、お前敏感すぎだろ。どうなってんだこの身体」

『やっ!…ゃ、だ…』

言いながらもぞもぞと太ももあたりを撫でさする大きな手に、ミウは腰の辺りがぞわりとするのを感じた。

『スバルくん…ん、…ごはん…』

頭がぽやんとするのを不思議に思いながら、ミウはスバルを連れていこうと声をかける。しかし。

「あ?お前飯になりに来たんだろ?」

『ち、がうよ…レイジさんが呼んで来いって…』

まだゆるゆると撫でてくる手に腰を跳ねさせながらも答える。



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