浅夢

□君のいる夢
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「……あ…」


――また、この世界…。

床一面に広がる白と黒のタイル。

空は淡い虹色で、カラフルな小さく可愛らしい星が散りばめられている。

お菓子の家、愛らしい動物たち、澄んだ大きな湖…

…現実にはあり得ない、メルヘンな世界。



君が用意してくれる、僕の"心"の中…

僕はこの世界はわりと好き。お菓子は美味しいし、動物たちは癒される。




「………」



――でも。



「……わかってないよ、バクラ…」




君がいないこの世界で、僕が満たされる筈がない。

君は今、この瞬間、僕の身体で…




「………何をしてるの?」



きっといつも僕に見せてくれる優しくてあったかい、ちょっぴり儚いその笑顔は

君の顔にたたえられることはないのだろう。


知ってるよ。
君と交代してこの世界に来たあと、目が覚めると持ってなかったカードが増えていること。




知ってるよ。
僕がこの世界を満喫したあと、気がつくと知らない傷が増えてるいこと。



知ってるよ。僕と交代したあと心に篭もってしまう君の瞳に、交代する前よりも哀しい光が満ちていること…




どうして僕だけこんな優しい空間に置いていくの?


どうして僕も君と一緒に闘わせてくれないの?


どうして僕に…
君の闇を分けてくれないの…?




こんな空間にいても…




君がいないんじゃ…




君が笑ってくれないんじゃ…




意味がないじゃないか……っ!




ここじゃ君の温もりを感じられないよ。


ここじゃ君の痛みを理解できないよ。



ここに独りでいたんじゃ…





「…寂しすぎるよ…………
……






……バクラ………っ!!」





――せめてこの想いが届くよう、交代するときは笑顔で言おう…







「お疲れさま」




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