浅夢

□月明かりの下で―前編―
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黄昏時。木々が真っ赤な夕陽の色に染まる中、一匹の妖怪と一人の少女が森にいた。


彼らの主人、殺生丸は「ここにいろ」と言ったきり帰ってこない。
妖怪――邪見は苛立っていた。



「邪見様、そんなに苛々してると禿げますよ?」


少女――りんがその辺のなんでもない草花を楽しそうに摘みながら話しかける。
邪見には元々髪は生えていないのだが。


「えーい、やかましいわっ!向こうへ行ってろりん!!」

邪見は溜まった苛立ちをりんにぶつけるように怒鳴りつけた。

「…はーい…」



りんは一瞬ビクつき、その後ふてくされたように呟くと邪見の前から姿を消した。



「ふん、なんでりんはおとなしくしてられないんだか…」


邪見はぶつくさと文句を言いながら足元の小石を蹴った。



―――数分後。


「きゃぁぁーぁっ!!」

「!!?;」



りんの尋常じゃない悲鳴を聞いて、邪見は飛び上がった。

急いで悲鳴がした方へ向かうが、既にそこにはりんの姿はなく、争った形跡とりんの摘んでいた草花だけが残っていた。



「…せ、殺生丸様に……殺され、る……」


邪見は額から脂汗をどっと噴き出し、引きつった顔で小さく呟いたのだった…。





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