浅夢
□温もり(少)
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クリスマス休暇。みんなが家に帰り家族と過ごすこの温かい休暇は、私には寂しさを煽るものでしかない。
帰る家もない私にとって、静かすぎる休暇中のホグワーツはまるで世界に一人取り残されたような虚しさを感じさせた。
「あれ?君は…」
『っ、?』
自分と教員くらいしか残っていないだろうと思われた城内で、突然生徒に声をかけられ驚いた。
(…こ、この人…)
目の前に現れたのは、学校で名を知らぬ人はいない有名人であるジェームズ・ポッターと一緒に「悪戯仕掛人」として悪名高いリーマス・ルーピン。
彼の腕にはどこから持ってきたのか大量のチョコレートが抱えられている。
「もう僕しかいないと思っていたけど、まだ生徒が残っていたんだね」
『…あなたは帰らないの?』
そう聞くと、ルーピン君は少し悩むように首を傾げた。
「そう…。うん、そうだね。僕は帰らない」
どこか寂しげに見えた表情に首を傾げたが、その表情はすぐに笑顔に戻った。
「こんな所であったのも何かの縁かも知れないし、よかったら一緒にお茶でもどう?」
両手いっぱいのチョコレートを示し誘ってくるルーピン君に、なにか企んでいるのかと警戒する。
「…ふふ、別に何もしないよ。僕が悪戯に関わるのはジェームズ達がやりすぎないように抑制するためだからね」
クスクス笑うルーピン君に、考えが見透かされていたようで恥ずかしくなった。
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