海賊
□その男、妖艶
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…嘘は、ついていないつもりだ。
実際高緒は船に乗せてもらっているだけで、仲間になったと認めてもらっている自信はあまりなかった。
(船のみんなは優しく歓迎してくれたけれど、ローやペンギンやシャチなんかには信用されてないし…俺はたぶん"監視対象"だ)
高緒の返答を聞いたキラーは、ぴくりと指を動かした。
「…そうか。…高緒、お前は…
ハートの海賊団とその船長、トラファルガー・ローを知っているな?」
今までとは違い確信を持っているようなその問い掛けに、高緒は眉を潜めた。
『…知ってる…』
(でも、なんで…)
「不思議そうな顔だな?キッドは気づいてないようだが、お前のその服…ハートの海賊団のクルーが着ているものだろう。」
『…あ。』
すっかり忘れていた。胸元にも背中にもはっきりと独特な海賊団のマークが縫い込まれているこのつなぎは、「自分はハートの海賊団です」と言いふらしているようなものだ。
『…知ってるけれど、仲間じゃないよ。ちょっと色々あってしばらく船に載せてもらってるだけ。詳しい内部事情も知らないし』
ごめんね?と首を傾げる高緒に、キラーは溜め息をついた。
「…嘘はなさそうだ、一先ずは信じよう。しかし、ハートの海賊団の船に乗っていたとわかった以上お前をこの船から黙って返すわけにもいかない」
なんとなく、察しはついていた。
(…これは、殺されちゃうかな?)
人生初の冒険がこんなにも短く終わってしまうのか…。と、高緒は少し残念に思っていた。…しかし。
「殺しはしない…キッドがお前を気に入ったようでな。俺や他の仲間も、何故かお前をどうこうする気にはなれない。実に不思議なことだが?」
疑いの目が、向けられている。
そう感じた高緒は、キラーに向かって両手を広げて見せた。
「…?」
『昔から「お前といると安心する」ってよく言われるけれど…もし何か疑ってるなら、気が済むまで調べてもいいよ』
なんなら全部脱ごっか?と大きめのつなぎの襟首のボタンを外しゆっくりとファスナーを下ろし始めた高緒を、キラーは咄嗟に制止した。
「っやめろ、お前が脱いだところで疑いが晴れるわけじゃない」
『…俺が信用できないなら、あなたが脱がせる?』
明らかに動揺を見せるキラーに妖艶に目を細めると、高緒はキラーの両手をとった。
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