暴彼
□弱虫バニー.3
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廊下をぱたぱたと小走りに進んでいく。途中の曲がり角で誰かと軽くぶつかった。
「きゃっ」
『ぁわ、ごめんなさいっ…ぁ、ユイさん』
見ると制服を着たユイが少し驚いた顔をしている。
「なんだミウちゃんか!そんなに慌ててどうしたの?」
『あ、えと…レイジさんを探していて…』
さっきの今であまり会いたくはないのだが、相談しなくてはならない事があった。
「レイジさん?…たぶんまだお部屋にいると思うけど…」
『あー、…どっちに行けばいいのかな』
苦笑いするミウにユイはくすくす笑って道を教えてくれた。
「あ、私もアヤトくん探してるんだった!もうそろそろ学校行く時間だから…ミウちゃんも今日からだよね?学校でもよろしくね」
明るい笑顔を向けてくれるユイに励まされ、ミウは学校でも上手くやっていけそう…とちょっと自信がついた。
『ん、こちらこそ!そしたら、また後でね』
ユイと別れ、教えてもらった道を進む。
(んと、端から三番目の部屋…ここか)
扉の前に立ち、一度深呼吸をしてノックする。
こんこんこん。
『れ、レイジさん…ミウです。いらっしゃいますか?』
暫くしてキィ…と扉が開いた。
「何か用ですか?…その格好…早く支度なさいと言ったはずですが?」
『あ…ぅ…、そ、その事でちょっと…』
何故か頬を赤らめもじもじとするミウに、レイジは眉を顰める。
「なんですか、はっきり言いなさい。」
『ご、ごめんなさい…えと、』
ミウは一度口を閉じたあと、決心したように顔を上げた。
『せ、制服のワイシャツとブレザー、を…もう一回り大きいのにしてほしいのですが…っ』
「…は?」
レイジは怪訝な顔をした。
たしかに制服のスカートだけを履き上はカーディガンという姿で訪ねてきたミウに違和感は感じていたのだが…
「…あなたの身長であればあのサイズでいいと思うのですが…着られなかったんですか?」
『………。』
何も言わずまるで縮こまるようにして胸の前で手を握っているミウに、レイジは合点がいった。
(…ああ、なるほど…)
「あのサイズでは胸囲が足りず前が閉まらなかった、と。」
『…っ!!!』
ぼっ!と音がするのではないかと思うほどミウの顔が真っ赤になる。
レイジはやれやれと言った様子で眼鏡の位置をなおした。
「…わかりました。もうひとサイズ大きなものを手配します。が、今日はもう間に合いませんね」
『そ、ですよね…どうしよう…』
しゅん…と困っているミウに再三ため息をついて踵を返す。
『ぅ…レイジ、さん?』
怒らせたと思ったミウが涙目で様子を伺う。
レイジはそんなミウにクローゼットから取り出した自分のワイシャツをずいと差し出した。
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