暴彼

□弱虫バニー.5
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『き、今日はみんなで晩餐だからってレイジさんが言ってたよ…?』

「………。」

黙り込むスバルをなんとか説得しようとミウは擽ったいのを我慢して話し続ける。

『んっ、ぅ…、は、早く行かないと、レイジさんに怒られる「っ、クソ」…?』

スバルは話の途中で舌打ちをしたかと思えば、唐突にミウの口に指を突っ込んだ。

『…っ!?』

「レイジレイジって…んな熱っぽい声で何度も呼んでんじゃねえよ。胸糞悪ぃ」

長い指が口内をゆっくりとなぞる。
またもぞわぞわした感覚に襲われ、ミウは逃れようと身を捩った。

「暴れんなっつったよな?つーかお前…口ん中も弱いのか?はっ、変態だな」

『んん、んっ!』

口端から唾液が溢れスバルの指を伝う。
ミウはなんとか状況を打開してスバルを連れていく方法を考えた。

(ど、どうしよう…口の中いっぱいで喋れない…)

「考え事かよ、余裕だな?…そうだ」

スバルはミウの顎を逆の手で掴み固定すると、耳元に唇を寄せ囁いた。

「舐めろよ、俺の手。全部くまなく綺麗にできたら、ここから出てやるぜ…?」

囁かれる低い声にすらぞくりと肩が揺れる。それが心底面白いというようにスバルはくすくすと笑っていた。

(……舐め、る…)

ぼんやりと掠れた頭の中をスバルの声が反響する。
ミウは口に突っ込まれている方の手首を両手で掴むと、口内にある指の先をぬるりと舐めた。

「…。」

『…ん……』

自分のよりも太くて長い指。まるでその形を覚えるように、ミウは丹念に舐めていく。

(…ちょっと、しょっぱい…)

思考のぼやけて纏まらない頭では、今の自分の行動に疑問を抱くことすらなかった。

『…ん、ふ…』

「…………っ」

五本の指全部を綺麗にしゃぶると、そのまま舌先を伸ばして掌をなぞる。

(…………おいし、ぃ…)

ミウはなぜか、白く滑らかなその肌が癖になりそうなほど気に入ってきていた。
いつまでも舐めていられるほど美味しく感じる。
もはや手首を掴むだけでは足りず逃がすまいとするように腕をがっちりと抱き締め、ぺろぺろとまるで毛繕いでもするように舐める。
小さな舌が掌を行き来する感触に、スバルの指がぴくりと跳ねた。

「………おい」

『ん、…はむ、…ちゅ』

先程舐め終わったはずの人差し指を再び口に含みちゅうちゅうと吸い始めるミウに、スバルはようやく声をかけた。

「…っ、もういいっ」

がたりと棺の蓋が開き、眩しい光に包まれる。
目が眩みそうになったミウは慌ててぎゅっと目を閉じ、その際に口に含んでいた人差し指を軽く甘噛みする形になった。

「…っ。……お前」

光に慣れてきた目をうっすら開けると、逆光になっているスバルの頬がなんとなく赤いように見えた。

「…すげえ顔してるぞ?そんなに気に入ったかよ…俺の手」

口の中に含んだままの人差し指を舌の腹でぬるっと舐めると、焦ったような仕草で抜き取られてしまう。
唾液の細い糸が名残惜しげに繋がって、切れた。



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