GEASS EROS

□貴方はいつだって黄色の水仙のような人
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空中庭園に佇む青年はひらひらと舞う蝶を指先に乗せて悲しげな瞳で見つめる。


「此処に居らしたのですか」
「…私は暇だからね。」
「貴方が読みたがっている本は与えていますよ。
何か他に欲しい物はありますか、兄上」
「自由が欲しいね」
「それは無理ですよ」
「本当に欲しい物は手に入らないようだ、今も昔も」
「…」


今も昔もと言う言葉にルルーシュは目を細めた。
彼は輝かしい生活をしていた。
地位も名誉も才もある。
生を受けてから本当の王子であった。
それなのに、何が手に入らないと言うのだろうか。

妹も失くし、母も父も失くし、親友も失くして何もない自分よりも恵まれている。
幼い頃から死んでいた自分よりも幸せな癖に、ルルーシュは心の中で毒づいた。


「…今夜、また来ます」
「…」


ルルーシュがそう言っても彼は何も言わなかった。
その態度に腹が立ったが、何も言わずに空中庭園を出た。

空中庭園の先には彼の寝室がある。此処はシュナイゼルの鳥籠である。
彼が作った鳥籠に囚われているのだ。


「…陛下」
「行くぞ、スザク」
「Yes, my majesty」


この鳥籠に来る為に蜃気楼を使っている。スザクは彼に会うルルーシュを良く思ってはいない。

それでも、彼が心休まる瞬間はこの時だけなのでそれを辞めろとも言えない。

スザクではルルーシュを休ませる事は出来ないのだ。
それはC.C.もそうであった。
彼がそれについて憤慨してた時彼女が言い出したのだ。

夜も眠れないくらい心が荒み罪の意識に囚われているのだ。
それを癒すのが夜毎通いであるのだから、そう簡単には止められない。


「…スザク、好きな人から嫌われているのは俺への罰なのか?」
「僕は君が好きだよ、友人として」
「…そうだな、俺も友人としてお前が好きだよ」


彼を好きになってもつらい恋をしていたのだろう、とぼんやりと考える。それでも、彼を好きになるよりは幾分か幸せだったかもしれない。

契約を結んでいる以上、対等である。でも彼とはそんな関係になれない。

主人と奴隷。
この関係は変わらない。
彼にギアスをかけてしまった時から。


(それでも俺は、彼を愛しているんだ)


間違って手にいれて、心が押しつぶされそうでも、それでも彼がまだ会話をしてくれているだけで十分であった。
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