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□大人になったら
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ガチャ。

受け付けで鍵を受け取り、番号札の部屋のドアを開ける。
中はどちらかと言うと狭かったが、一晩休むには十分な広さだった。
入ってすぐの右側に脱衣所とお風呂場、洗面所があり、左側にはトイレ。
奥に進むと1人用のベッドが2つある。


「ベッドがふかふかだニャー!」

「最近はろくに休めてなかったからな。
明日に備えてしっかり休めよ。」

「じゃ、ニャーは先にお風呂に入って来るけど良いニャ?」

「あぁ。」


そう言いニャースはご機嫌のまま脱衣所へ向かった。
途端にコジロウと2人っきりになり、妙な沈黙が流れる。


「ふぅ……疲れたわね。」


正直、こんな空気は苦手だ。
気まずい雰囲気から抜け出したくてそう呟いた。


「そうだな。その、あんまり無理すんなよ?
辛くなったら相談していいし。」

「ありがとう。
やっぱり、コジロウは頼りになるわね。」


ニコッと微笑むと、コジロウの顔に一瞬赤みが差した。
熱でもあるのかしら……。


「で?どうしたんだよ?」

「あ、いや。大した事じゃないのよ。
ただ、夢を見ちゃって……」

「夢?」


そっとベッドに腰掛けたアタシの横にコジロウも座り、2人並ぶ形になる。


「アタシ、ジャリボーイに会ってたの。
周りにはコジロウもニャースも、誰も居なくて。向こうも1人だった。」

「ジャリ、ボーイに…」

「何故か最近頻繁にそんな夢を見るようになっちゃって……本当、何なのかしらね?」


あれ、返事が無い。
疑問に思いコジロウに顔を向けると何やら下を向いて険しい表情をしていた。


「こじ、ろ………?」


がしっ。


すると、急にコジロウに手首を掴まれた。
その表情はいつも通りで、しかし若干焦っているような、そんな表情。
掴まれた手首がジンジンする。
アタシが驚いていると、そのままベッドに押し倒された。

ギシッと音を立てて軋むベッド。
抱きしめられるカラダ。
耳にかかる吐息がくすぐったくて、くぐもった声が漏れた。


「んっ……ちょっと、コジロウ……」

「行かないでくれ。」

「え?」

「俺の元から、居なくならないでくれよ……」


腕の力を強くされる。
耳にかかる吐息のせいで、アタシの体は熱を持ち始めていた。


「っ…い、居なくなったりなんかしないわよ?
だってアタシ達“仲間”じゃない。」

「なか、ま……」

「コジロウもニャースも、アタシにとって誰よりも大事な仲間だから……」

「ムサシは、俺を“仲間”としてしか意識してないの?」

「どういう、事?」

「俺は……ムサシの事……」


ガチャ。


「ニャー!!いいお湯だったニャー!!」


最悪のタイミングで、脱衣所のドアが開きニャースが出てきた。
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