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□大人になったら
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「ニャ……おミャーら…」

「あ…っ…ち、違うのよニャース!!これは、えと。」


必死に言い訳を探そうとするが見つからない。
こんなシーン、何も知らない人が見たらコジロウがアタシを襲っているようにしか見えない。
とにかく誤解を解きたかった。


「悪い、ムサシ。
今の言葉、忘れてくれ……俺、どうかしてたよ。」

「コジロウ………」


サッとコジロウがアタシから離れベッドから下りたかと思うと、そそくさと脱衣所へ向かった。
アタシもまだ少し熱が残った体を起こし、再びベッドに座った。
何なのよ、一体。


「ムサシ、本当に大丈夫なのニャ?」

「やあねぇ。さっきのは別に襲われてた訳じゃ……」

「違うニャ。
ムサシ、最近元気ない気がするニャ…」

「な、何よそんな事!?
気にする事ないわよ…ただの疲労だから。」


しかし、本当にそうなのか。アタシにはわからなかった。
これ以上心配をかける訳にもいかない。
そう思い、咄嗟に偽って答えた。





結局、コジロウの言葉の意味を理解出来ないまま、いつの間にか夜になっていた。
お風呂を済ませ、明日に備えて仮眠する為ベッドに潜る。

コジロウとはあの出来事からギクシャクしたまま。
そんな事もあり、扉側のベッドにアタシとニャース、奥のベッドにコジロウが寝る事になった。

疲れているはずなのに、何故か眠れなくてぼんやりと天井を眺める。
今日も、あの夢を見ちゃうのかな……。

何故、あんな夢を頻繁に見るようになってしまったのか。
実の所よくわからない。
事の始まりは、やっぱりあの屋敷での出来事なんだろうか。
あの時は2人とも、アタシを全力で守ってくれた。温めてくれた。
って、アタシは何掘り返してんのよ!
もう終わった事じゃない。


「ちょっと、風にでも当たりに行きましょうかね……」


冷たい風で頭を冷やそうと、アタシはベッドから体を上げ立ち上がった。
コジロウもニャースも、気持ち良さそうに眠っている。

音を立てないようにそっと部屋のドアを開け、薄暗い蛍光灯に照らされた廊下に出た。
どうやら、このホテルには屋上があるらしい。
丁度良い。そこに行こう。
こんな時間なら、きっと誰も居ないはず。



ギイーッ。

年季のこもった音を立て、屋上へと続くドアが開いた。
何か、あの時の事を思い出すわね。

屋上へ出ると、冷たい風が全身を掠める。
そのせいか、一瞬気付かなかった。
目の前の、人影に……。


気付いた時は、その人物と向かい合っていた。
どこかで見たような、この展開……。


「だ、れ?」
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