ぬら孫novel

□『飛』行機雲に恋をした
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授業中、先生の話も上の空で
勿論板書を写す手も止まっている

私の頭は数学の公式よりも、一人のクラスメートの事を考えていた


最近のリクオ君は可笑しい
授業中も遠くをぼんやりと見つめてたり(今の私が言えた事じゃないけど)
そわそわと落ち着かない様子だったり
・・・・どうしたんだろう



(でもどうしたの、なんて聞けないし)



長い間見てたから、些細な変化にも気付ける
長い間見てたから、聞いても誤魔化されるって分かる



(クラスで、この学校で彼を一番知ってるのは私だと思う
でも
私はリクオ君の事を何も知らない)



ソレを時々酷く突き付けられる時があるから
私は彼との距離を測りあぐねている

どこまでが踏み込んで良い場所なのか
どこからがあの笑顔で線を引かれ、遠ざけられるラインなのか



(・・・・彼女はどうなんだろ)



頭に思い浮かんだのは、最近よくリクオ君と一緒に居るのを見かける女の子
及川つららちゃん
彼女と私のリクオ君に踏み込める境界線はきっと違う



(どんな関係なんだろ)



気になるけど、聞きたくない
知りたいけど、知りたくない



(嗚呼、複雑だなぁ)



考えるのに疲れて机につっぷした




「カナちゃん?」



聞き慣れた声に顔を上げると
目の前にはリクオ君の顔
どうかしたの、と聞いてくる彼に、チラリと時計を見れば授業はとっくに終わっていた
黒板には訳の分からない式がびっしりかかれている



「難しい問題は疲れるわね」



そう言うと彼はそうだね、と笑った
私が抱えている問題は数学みたいに公式がないぶん
答えを出すのに時間がかかりそうだ



(今は向けられた笑顔がただ嬉しいと感じた)










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