NOVEL(etc)

□執着デッドエンド
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「馬鹿だな、お前は」



頭上から降ってきたその声は
科白とは裏腹に優しい響きで私に落とされた



「折角、逃げる為の時間も選択肢もやったのに」



膝を折った体制の私にそっと手が伸ばされた
伏せた視線から見えたその指先が
私に触れるか降れないかの位置で戸惑うように止まる
その行為すら愛しくてしょうがない
自分は既に彼から離れることは出来ないし、ソレを望むなんてあり得ないのに



ゆっくりと顔をあげると
悲しそうに揺れた紫色の瞳と目が合った



(嗚呼、そんなお顔はさせたくないのに)



伸ばされかけていた彼の手が下げられるのを
とても残念に思った



「ルルーシュ様」



ゆっくりと、優しく確かめるように目の前の
自分の主の名前を呼んだ
ゆらりと揺れた紫に戸惑いの色が浮かんでいた



「ルルーシュ様、」



もう一度、ありったけの愛しさを乗せて名前を呼んだ



「・・・・ジェレミア」



返ってきた自分を呼ぶ主の声に頬を緩ませれば
彼は困ったような、泣きそうな顔で微笑み返してくれた



「私は貴方と居たいのです、貴方を護って居たい」



そう願ったから、此処に居るのです、と真っ直ぐに自分を見つめて言ったジェレミアに
ルルーシュは先程下げた手をまたそっと彼に伸ばした



「俺はもうお前を離してやれないぞ?」



その言葉と一緒に、私の頬にそっと触れてきた彼の指先は少し震えていて
無礼だと思いながらも
そっと添えられただけだった彼の細い指を両手で握りしめた



「貴方に縛られるなら本望です」



嫌だと言われても無理矢理にでも傍に居るつもりだった
何もかも捨ててもつかえたいと願う人などこの方以外に居ないのに



(その彼が望んでくれたのだ、逃げる必要が何処に在る)



彼は優しいから、私を逃がそうと幾つもの逃げ道と選択肢と時間を私に与えて
何時でも逃げられるように
私が彼の側から離れられるようにして下さっていたけれど
私は彼のその優しさに心を固めるばかりだった



(主の気持ちを無下にしたようなものだと、心は痛んだが)



私の言葉に、ルルーシュ様は儚げに微笑んでみせた



「では、ジェレミア・ゴットバルト
お前をルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの騎士に任命する」



凛とした声と、告げられた言葉に
体が歓喜するのが分かった














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