NOVEL(etc)

□低迷ダッチロール
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グラグラグラグラ
視界が定まらない位に脳が焼かれて

クラクラクラクラ
目の前の黒を掻き抱いて目を閉じた






「重い」



その一言でハッと我に返ったら
腕の中の彼は不機嫌そうに眉を寄せてこちらを睨み付けていた



(私より小さい体、華奢な手足)


(簡単に壊れそうな人)



「すみません」



彼の重い、とゆう苦情に申し訳無さそうに詫びたが
ジノはルルーシュを掻き抱くその手を緩めようとはしなかった
その代わり彼に負担がないようにほんの少し体を離す



「・・・・ジノ」



叱るように低い声色で名前を呼ばれた
読書を現在進行形で邪魔されて不機嫌なのだろう
けれど手放したくなかった



「陛下、申し訳ありません
離れられません」



素直にそう伝えれば
下から溜め息が聞こえた



(立ってられない)


(好きで好きでおかしくなりそう)


(貴方が目の前に居ると視界が狭くなる、目眩がする)



後ろから抱き締めた体は簡単に腕の中に収まってしまって
どうしようもない目眩は収まったけど
冷静な頭が今すぐ離さなければとか不敬罪だとか色々と警報をならしても
離れるどころか回した腕をほどく事も出来なくて
彼の肩口に落とした自分の頭を押し付けた



「捨てられそうになった犬みたいだな」



冗談混じりに紡がれた言葉に
本当に、その通りだと情けなくなった



「私は捨てられたくない」



本当に、この人に捨てられたら私はどうなってしまうんだろう



(きっと立っていられない)


(視界も揺れて、重心さえ保ってられなくて)


(グラグラ揺れて、墜ちてしまう)



「ナイトオブスリーの名が泣くぞ」



呆れたようにそう言って
彼の手のひらが肩口に押し付けたポンポンと私の頭を撫でてくれた
それだけの事なのに、心臓が壊れそう



「じゃあ騎士にして下さい
私は貴方の騎士になりたい」



近くに居たい、離れたくない、守りたい
引き離されたら私は自分自身さえコントロール出来る自信がない



「・・・・」



二回目の溜め息と一緒に
今度はパタン、と本を閉じる音がした(そういえば彼は読書中だったな)


暫くして、今度は両手で優しく優しく私の頭を撫でてくれた彼に
我慢出来なくて抱き締める腕に力がこもった



今度は重い、という彼の抗議は聞こえなかった










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