NOVEL(etc)
□01 Rose
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彼は、部屋で本を読んでいた
今時珍しい紙媒体の分厚い本を持って
白い指がページをめくる音を聞きながら
ふわふわ、ふわふわと
半無重力の中で漂っている彼の茶色の髪を眺めていた
柔らかそうなそれを眺めていたら、私の視線に気付いた彼が
読みかけの本を閉じてこちらを向いた
「おいで、ネーナ」
ふわり、とろけるような笑みを浮かべて私を呼ぶのだ
「にーに」
軽く床を蹴って、両手を広げた彼の胸にダイブした
おっと、と声を漏らしながら、彼はしっかり私を抱き留めてくれる
「お転婆だなあ、ネーナは」
クスクスと笑う彼の腰に手を回してギュッとしがみついた
私の甘えるみたいな仕草に
彼は私の髪を優しくすいて、頭をなでる
「ねえ、にーに」
自分よりも高い位置にある彼の顔を覗き込めば
やはり彼は優しい笑みでどうした、と返した
「ううん、なんでもない」
満面の笑みで返せば彼はそうか、と目を細めてクシャクシャと私の頭をさっきよりも少しだけ強く、かき乱すように撫でる
いつも革の手袋でおおわれていた白い指先も
仲間や家族に向けられていた優しい声も
仲間を守り標的を狙っていた深緑の瞳も
今は私一人のものだ
誰にも渡さない
「ニールにぃ、ずっとネーナの隣にいてね」
偽の妹だっていい
偽りの関係だっていい
もう返すものか渡すものか
当たり前だよ、と笑った彼に、絶対だよ、と笑い返した
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Rose=薔薇
私は貴方にふさわしい
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