NOVEL(etc)

□05 Edelweiss
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彼はその瞳を固く閉じていた


最初に彼に会ったのはCBのトレミーで
次に彼を見つけたのは暗い宇宙の中で
ボロボロの姿で、パイロットスーツで漂っていた彼を連れ帰ったのは何でだったのか
自分でも分からなかったけど



治療ポットに入った意識のない彼をただ眺めていた
茶色の髪、真っ白な肌
見つけたときは眼帯に覆われていた片目は、傷は治ったけど
眼球は移植しなければならなかった
元々の彼のブルーグリーンより少しくすんだ、けれど、深い緑色がはめ込まれている



「まだ起きないの?」



ネーナは少々退屈だった、けれど彼女はそこを動かなかった

何故だか分からないけど、彼に触れたくなって
治療ポットの蓋を開く
もう状態は安定しているし、命の危機は脱した、少しくらい大丈夫だろう、と彼に手を伸ばした
そっと彼の肌に触れた壊れ物を触るみたいに、強くさわったら壊れそうだったから


ピクリ、と


それまで固く閉じていた彼の目がゆっくりと開いて、眩しそうに細められた



「エイ、ミー・・・・?」



彼は私を見て、誰かの名前を呟いた
意識が混濁しているらしい彼は、ぼんやりとした瞳で私を見ていた

固まってしまった私に
彼はまだ上手く動かせない手を伸ばしてくる
その手を避けようとは思わなかった



「大丈夫、今度こそ、お兄ちゃんんが守る、から、な」



ポンポン、と私の頭に手を押いて
途切れ途切れのかすれた声で、彼は私にそう言った

痛みと疲れからくる眠気からか意識も曖昧そうな彼は
伸ばした手と意識を再びシーツに沈めてしまった



(泣きそうなった私の顔を、誰も見ていなかった)




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Edelweiss=薄雪草
大切な思い出






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