NOVEL(etc)

□黒炭よりも真っ黒な
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気付いたら、その鳶色の髪だとか、男にしては白い肌とかを何時も目で追っていて
彼の行動や仕草が気になっていて
それが信頼とか、無意識に頼ってしまっているから、なんていう事じゃないのに、もう僕は気付いてしまっていた
だから、その日も僕の目は無意識に彼を追っていて
ポロリとこぼれた銀のソレに目敏く気付いてしまったんだ






「ロックオン!これ、落としましたよ」



トレミー内でアレルヤに呼び止められて振り返ってみると
彼の手の中には小さな細長い銀色の筒状のものが乗っかっていた



(・・・・あ)



それはつい先日、偶然か奇妙な縁でもあったのか俺の物になった赤いルージュで
どうしようかと持て余している内に、いつの間にか何処かに無くしてしまっていた
慌てて探す気にはどうしたってなれなかったし
丁度よかったんだ、とそのままにしておく内に
その存在もすっかり頭から抜け落ちてしまっていた
だから一瞬、反応が遅れてしまったのだろう

一瞬固まった俺を不思議そうに見ているアレルヤに取り繕うみたいに笑顔をつくって近寄った



「ああ、ありがとな」



どうやら上着のポケットに入れっぱなしにしていたのだろうソレをアレルヤから受け取ると
彼は興味深そうに俺の掌にあるソレを見つめていた



「・・・・どうした?」



「えっ」



俺の呼び掛けにビックリしたのかアレルヤは視線を下に落とすと
えぇと、と口籠った



(ああ、そうか)



「気になる?」



何が、とは言わずにヒラヒラとルージュを振った
オズオズと視線をあげたアレルヤにニッコリと笑ってやれば僅かに頷いたから、そうだよなぁ、とぼやいた


(男がこんな物持ってるってのも変だよなぁ)



でも変に誤魔化すのも可笑しいし、と考えると
ロックオンはスイッとアレルヤに近付いた



忘れられない、大切だった人との思い出の残骸だよ



内緒話のように小さな声で耳元で囁いて
ロックオンはそのままアレルヤの横を通りすぎた
一瞬だけ呆けていたアレルヤがバッとこちらを振り返るのを感じ取ったけれど
ロックオンは振り向かずにヒラヒラと腕を降ってそのまま通路に消えていった



振り向かなかったから、アレルヤが何処かに苦しそうに
遠ざかるその背中を見詰めていたのも、ロックオンは知らない










『黒炭よりも真っ黒な』

過去と真実は闇の中
ほら、覗きこんだって見えないでしょ?








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