NOVEL(etc)

□ねえ、傍に居させてよ。
1ページ/1ページ







コロコロ、コロコロ
トレミーの廊下を丸いオレンジのロボットが転がっていた


「ロックオン ロックオン」



コロコロ、コロコロ



「ロックオン ロックオン」



コロコロ、コロコロ



「ロックオン ロックオン」



いつも傍に居た相棒の名前だけを何度も何度も繰り返して
何処を探しても見つからない彼を、ずっと探し続けていた







あの宇宙で別れてから、オレンジのロボットは彼に、自分を相棒と読ぶ彼に任された機体の中で
帰ってくると言った彼を待っていた
ずっとずっと待っていた

でもいくら待っても彼は帰ってこない


それに皆、彼のボロボロになった機体を直そうとしなかった

最後の戦いから数日がたち、なんとかトレミー内が落ち着いた頃
誰が呼び掛けても、連れ出そうとしても頑なにデュナメスのコックピットから動かなかったロボットは
何日か目にピョン、とコックピットから跳ね出した

そして、いつ彼が帰ってきても良いように、と
修復作業を開始しようとするオレンジのハロを、皆は止めるのだ



『ロックオン、帰ッテクル、ハロ、デュナメス任サレタ、ハロ、デュナメス直ス!』



ハロがそう主張する度、
皆が皆、もう良いのだと言って悲しそうな顔をした



修復作業を止められたハロは
デュナメスの中で考えた
ロックオンと一緒に過ごす中で発達していった回線の中で
情報を集めて整理して、答えを出す
それが“考える”事だとロックオンはハロに分かりやすいように教えてくれた
だからハロはロックオンが教えてくれた通りに“考えた”



(ロックオン、帰ッテコナイ)


(ロックオン帰ル、ハロト一緒、ズット一緒)


(ロックオン、嘘ツカナイ)


(ロックオン、ビンボークジ引イタ)


(ダカラロックオン、帰ッテコレナイ)


(ロックオン、探ス)





それからハロはトレミーの中を移動していった
コロコロ、コロコロ転がりながら
相棒の名前を何回も呼んだ
もう探す場所がないくらい何度も何度も、探せる場所はしらみ潰しに
何度も何度も


あの優しい緑の目をした相棒が、また笑って、ハロ、と名前を読んで、抱き上げてくれるまで


何度も何度も、彼の名前を呼んだ









(そして電池が切れるまで)





--------------------------



きっと最初で最後の
AIのワガママと狙撃手の嘘











[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ