NOVEL(etc)

□URUE 01
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そこはとても暖かかった
何も見えなかったけど、優しい声がした
何かは分からなかったけど、俺に優しく語りかけて、労るように触れてくるものを感じていた
だから俺はその場所が好きだった




意識が段々と浮上する感覚、それに導かれるようにうっすらと目を開ければ
白い光が眩しくて、直ぐにクッと目を細めた



(ここは何処)



目覚めてから、それまで自分がずっと眠っていたんだと気が付いた
まだぼんやりとする思考で、目覚めてしまったのを少し残念に思った



(あの暖かな感覚は居心地が良かったのに)



フカフカのベッドに横たわったまま
漸く光に慣れてきた目を徐々に開いていく
目に入ったのは真っ白い天井と・・・・



「おはよう」



すぐ側で声がしたことに驚いた
誰かが居る気配なんかし無かったから、ここには自分しかいないと思っていた
その声の方に首を動かすと、柔らかそうな茶色と、緑色の瞳の男が
こちらを向いて微笑んでいた



「目が覚めるのをずっと待ってた」



穏やかな声
男の手が伸びてくるのを俺はただ黙って見ていた



「おはよう、お前さんの名前は・・・・エイル
エイルだ」



彼の声は優しくて
そっと触れてきた指に撫でられて、俺はひどく安心してしまった



(嗚呼、そうか、彼だったんだ)


(俺の横に居てくれた、暖かいものは)



それに気づいた途端、一気に気が抜けてしまって
さっきまで眠っていたはずなのに、また強い眠気が襲ってきた



「エイル?眠いのか?」



確かに眠かったけど、眠ってしまいたくなかった
漸く見ることができたこの人と、まだ話がしたかった



「いいぜ、起きるまでずっと横に居るから、ほら、おやすみ」



トントン、と布越しに伝わってくる振動と、彼の体温が心地良くて、ゆるゆると瞼が下がってきた



(嗚呼、また眠ってしまう)



その前に、



「名前・・・・」



眠気にゆるゆると落ちていく意識の中で、エイルは呟いた
彼の名前が知りたかった



「ん?俺か?・・・・俺はニール」



言いたいことは伝わったらしい
彼はそう言ってふわりと微笑んだ



(ニール、・・・・ニールか)



俺はその名前を何度も心の中で呟いて
それから意識を手放した




それが一番最初、それが始まり
俺の名前を呼んでくれた、君の声



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初めまして






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