NOVEL(etc)

□URUE 02
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ずっとずっと、待ってたよ




ニールは暇さえあればそこに足を運んでいた
真っ白な部屋の真ん中には、ベットが一つポツンと置かれているだけ
真っ白な部屋の真っ白なベットの真っ白なシーツの上には
1人の男が眠っている
自分と同じ顔、同じ遺伝子の、俺の対になる存在

ニールは、今日も眠っている男の髪を撫で、男の白い指にそっと自分の指を重ねた



「なあ、まだ起きないのか?」



ニールはリボンズに彼の存在を教えられてから足繁くこの部屋に通い
運び込んだ椅子に腰掛けてずっと彼を見ていたり、話し掛けたり、触れたりしていた



「名前、決めたんだぞお前に似合うように、一生懸命考えてたんだ」



「でも、やっと決まった」



だからさ、ほら、起きろよ

そんな風に語りかけながら、ニールは笑った
なんとなくだけど目の前の寝坊助は今日起きる、とニールは確信していた


ずっと眠り続けている俺の半身、俺は昔の記憶を忘れてしまっているけど
前もこうして自分と同じ色の頭を、遠くから眺めていた気がする


利き目を無くしたのは狙撃に特化した自分には痛手だけど
俺にとっては記憶を無くしたことの方が怖かった
いくら周りに説明されても何も実感はないし、今まで俺を形作っていた一部が無くなったみたいで



(嗚呼、でも)



(おまえが居てくれたから)



俺の半身、俺達が造られてから今までずっと目を覚ましていない俺のパートナー
彼と二人で作った思い出がないなら
俺は彼との思い出を何一つ忘れてなんかない、失ってない

その事実に少し安心した



(なあ、ほらもう忘れたりなんかしないから)



「起きろよ、エイル」



初めて彼に向けて俺が考えた彼の名前を声に出して囁いた
彼に似合うように考えた名前

その響きがなんだか言い慣れたもののように感じて
もしかしたら記憶がなくなる前にも、自分は彼に同じエイル、と言う名前を付けて
今のように彼に呼びかけていたのかもしれない、と思って
少しだけ笑ってしまった



ピクリ、と今まで堅く閉じられていた瞼が動いた
薄くのぞいた瞳の色は、自分とは違う綺麗な金色



(ああ、やっと起きてくれたのか)



俺ははやる気持ちを抑えてなるべく彼を驚かせないように声をかけた



「おはよう」








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待ってたよ






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