etc.

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 【精一杯の強がり】
2009/01/23

哀しい気持ちは消えないけど、少しずつ記憶は薄れてゆく。

今日久々に思い出したあの頃の気持ち。
強がり続けた1ヶ月間。
本当は不安で辛くて怖くて仕方がなかった。

父が入院して旅立つまでの1ヶ月。
ゆっくり振り返ることなんて無かった。

父が居なくなってしまった事の方が辛くて大きくて、その前の事を考えるなんてあまりなかった。

入院中に一緒に甘栗食べたり、煙草を吸いながら見た笑顔とか思い出すのは父の姿。

それ以外の事はあまり考えていなかったけど、思い出してみると凄く辛かった。

父が入院して亡くなるまでに誰かの前で泣いたのは、父が入院する日の1度だけだった。

前日の夜中から張り詰めた空気。
朝一で掛かり付けの医者に行き、病院への紹介状を貰い病院へ行った。

検査中に母と廊下で待っていたら緊張の糸が切れたらくし泣いてしまった。

そしたら思いの外早く検査が終わり慌てて涙を拭いてバレないように父に微笑んだ。

誰かの前で泣いたのはその時だけ。
その後の1ヶ月間も1人の時に涙ぐむことはあっても、泣くってことは無かったと思う。

癌と解った時も、手の施しようがないって解った時も必死で泣くのを堪えた。

あっ。
でも1回だけ友達と電話で話してて泣いたことがあったかもしれない。

本当はもっともっと泣いていてもおかしくはなかった。
でも泣いちゃいけないって自分に言い聞かせた。

さっちよりも父の方が怖くて不安で仕方がないはずだから。
だから出来る限り笑っていようと思った。

暗い顔をしていても何も変わらない。
さっちが哀しい顔をしていたら父を不安にさせ悲しませてしまう。

だから泣かない。

そして少しでも父に笑っていて欲しかった。
だから精一杯明るく振る舞った。

例えそれが強がりだとしても、笑っていればどうにかなるんじゃないかって、そう思っていた。

笑う門には福来る。

病は気から。

そんな事を考え、前だけを向き出来るだけ明るく楽しく過ごそうとしてた。

精一杯、強がり続けた1ヶ月間だった。

強がり続けた事に本当に意味があったのかは解らない。

でも、父の前で泣いたりせずに済んだのは良かったのかもしれない。
泣いてしまっていたら、きっと後悔していたと思うから。

父と一緒に家族みんなで諦めることなく、前を向いて過ごした1ヶ月だった。

きっと、さっちだけでなくみんな不安で仕方がなかったと思う。
それでもみんな明るく過ごす努力をしていたのだと思う。

だから、さっちも強がり続けることが出来た。

強がるだけではなく、本当はもっと強くならないといけないのかもしれない。
強くなれるものなら強くなりたい。

でも、そんな簡単には強くなれないから、さっちはこれからも強がり続ける。

強がってこそさっちだから。


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