夢から覚めて、重いまぶたを上げたらすぐに目に映ったものがあった。
それは一人の少年。柔らかそうな茶色の髪、寝ていても分かる
整った顔立ち。起きた彼女はそっと彼に「おはよう」といい、
起き上がって伸びをし、シャッとカーテンを開けた。


「さむいなあ」


彼女は鼻をすすり、外を見つめる。昭和59年1月の雛見沢を。

色々な事があったんだ、本当に。自分達の手で運命を変えた、
あの6月……。最近の出来事のように鮮明に思い出せる。

その出来事からもう何月かたった今、この村は平凡そのものだ。
部活では、部長である園崎魅音の受験があるが、きっと失敗はしないだろう。
どんなゲームでも全力で、負ける事を嫌う彼女だから。
……もう少しで彼女はあの学校からいなくなってしまう。
それは寂しいこと、悲しいこと。でも大丈夫、逢えない訳じゃないから。



「……ん……」
「あ、起きた?圭一くん」


大きなあくびをして、回りを確認してから彼は彼女にあいさつをする。


「おはよう、レナ」
「おはよう、圭一君ーっ!」


と、彼女はものすごい速さで彼に抱きつき、ドサッと押し倒す。
何が何だか分からない彼は、赤面しかできない。


「な、ななななんだよ!?」
「んー……」
「って寝るなあ!」
「え、えへへ寒いからあったかいものが欲しくて」
「まぁ、確かに寒いが……だからっていきなり」
「いいの、いいの!だって私圭一くんの彼女だもん、健全だよ、だよ!」
「…………」


もちろん、抱きついたのは寒いからってのも嘘ではない。
でも、彼女はいまとても幸せだからその幸せを確認するため
彼に抱きついた……のが本心だ。

自分を、竜宮レナを、しあわせだとずっと想ってなければ
しあわせでいられなかった……でも、いまは違うから。

それはあなたのおかげだよ。

前から夢に見るんだ、彼女は。違う世界のかなしい自分を。
その時、心から救われた出来事があって、
それは仲間が信じていてくれたこと、彼が彼女を想っていてくれたこと。

(どの世界でも、私は圭一くんに救われてるんだ)


「圭一くん、好きだよ、大好きなんだよ、だよ……?」
「あははっ、そりゃどうも。俺もお前が大好きだぞ、だぞ?」


そしてお互い笑い合う。わたしたちが信じたこの世界で――。

(20061030)





[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ