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□交差した世界
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『はっきり言う。
僕は君が嫌いだ。今後一切、連絡をして欲しくない』

三日月の輝く夜、彼は電話口で私に淡々とした声でそう告げた。
溢れてくる涙をそのままに、でもひっきりなしに出てくる嗚咽と喉元に出かかった吐き気だけは何とか堪えて、私は口を開いた。
時々しゃっくりあげながら。

「ごめんね、ごめんなさい。
でも、貴方が私のことが嫌いでも、私は貴方が大好きです」

そう言うのが精いっぱいだった。






電話を切って、私はベッドに潜り込んだ。
ごろごろと寝返りを打ってみるが、一向に睡魔が訪れる気配はない。
目を閉じると、さっきの言葉が頭の中でぐるぐると回る。

“僕は君が嫌いだ”

どうしようもない寂しさが私を襲ってきて、私はベッドの中で両腕を回し、自分の肩を抱いた。
涙は相変わらず止めどなく溢れてくる。
私は涙を拭うこともせずに、ただひたすら泣いた。
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