Pkmn:R

□No Data
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「起きてください、オメガ」



男の声が私の起床を呼び掛ける。眠気で瞼が重く、脳の意識もはっきりとしない。ただその声が眠気に微睡む私にとっては疎ましく、苛立ちの言葉を発していた。



「うるさいな...」

「.............仕方ありませんね」



男が呆れたように溜息をつく。すると布団を剥がされた。布団の温もりが遠のいて、思わず身震いして目を開ける。



「さむ.....なにすんだよ」

「もう朝の8時ですよ、いい加減に起きてください」



ぼやけた視界に男の水色髪が映る。目を擦ると男の輪郭がはっきりと映り、髪と同じ色の瞳が私を見つめていた。



「.....知るか、寝る」



男の瞳を数秒見つめた後、そう言って私は枕に抱き着く。目を瞑り現実から意識を遠ざけようと枕に顔をうずめて深く息を吐いた。
だが突然の二の腕の痛みに目を見開き思わず声を上げる。



「痛い痛い痛い!!」



我慢ならずに飛び起きると男は二の腕を抓っていたようで、飛び起きた際に男の手が離れた。私は抓られた赤い皮膚を見て男に怒鳴る。



「てめぇふざけんなよ!」

「ふざけてなどいません。それに、残念ながら夢ではないんですよ。オメガ」

「あ"!?」



男の言葉に荒れた声で聞き返す。だが男の目を見て昨日の記憶を思い出した。
確かに私は誘拐された。この男によってロケット団という組織に強引に入団させられた。よりにもよって、この不気味で信用ならない男に。
そう考えると幻覚ではなかったことを実感させられる。この現実が夢であればよかったが、この男が言うのは事実だ。先程の痛みでより痛感させられる。



「.....どうしてこうなる」



悔しさと困惑で頭を掻きむしり始める私に男が言う。



「今日はお前に会わせたい者がいます。着替えを用意したので早速着替えて貰えませんか」



男が真っ黒な団服をベッドの脇に置いた。怪訝そうに顔を歪めるも、とりあえずその団服を広げてみる。



「うげーっ、スカートかよ!これ短すぎじゃねぇの?」

「我慢なさい、お前は今日から我々ロケット団の一員なのですよ。規則ですから、大人しく着替えなさい」

「てかさ、この寝間着オレのじゃないんだけど。オレの服どこにやったんだよ」



自分が着ている服に違和感があって見れば、真っ白なTシャツと短パンの寝巻きを着ていた。こんな服装ではまるで病人か、あるいは実験される被検者のような見た目でどうも居心地が悪い。



「お前の服は雨に濡れていたので、脱がして洗濯してあります。もう乾いてるので返しますよ」

「は?」



私の怒りの篭もった返答を無視して、男は昨日まで私が着ていた私服を畳んで差し出した。



「脱がしたって何、お前普通脱がす?他人の、しかも女の服。頭おかしいんじゃねぇの?」

「おかしくなどありません。そもそもあのままでは風邪を引きますし、服も汚れていました。脱がす他ないかと」

「はぁ?!じゃあお前見たの?オレの身体?」

「えぇ、見ましたよ。それが何か?」

「きっっも」

「黙りなさい」

「ぐぇっ!!」



今度は弱く首を掴まれ潰れたような声が出た。ただでさえ昨日の痛みであまり動かしたくない部位を掴まれて痛みで泣きそうになる。しかし掴まれた腕はすぐに離れ、男は溜息を漏らして口を開いた。



「とにかく着替えなさい、もう時間が過ぎています」

「じゃあ着替えるから出ていけよ」

「.....わかりましたよ」



私の殺気の篭もった目に呆れたように男は渋々了承して部屋を出る。
私は男が出ていったドアを見て顔を引き攣らせるも、渡された団服に手をかけた。
しばらくして着替え終えた私は部屋に置かれてあった鏡の前に立ち、全身を見る。明らかにスカートが短い。膝より上に生地がないなど絶望で、これでは下着がもろに見えてしまうに決まっている。もう少しこのデザインどうにかならなかったのだろうか、下半身の露出が激しく肌寒い。
溜息を着いて帽子を被るが、後ろ髪がどうにも入らない。もさもさに伸びてしまった自分の髪を恨みつつ押し込み、鏡を見返した。



「やっぱだせぇわ」



鏡に映る顔は酷く不機嫌な表情でこちらを見つめていた。
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