光差す旅路の先

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   ■ ■ ■



 瀕死の重傷を負っている三蔵。そして、制御装置が外れてしまった悟空。
 目の前で起きている事態に自分の無力さを感じる。





――わたしには救うことも止めることもできない





――なんでこんなにも無力なんだろう





――わたしにもっと力があればみんなを守れるのに





 そんなことも考えていると目の前が真っ白になる。
 ふと瞼を上げれば辺り一面真っ白な世界だった。なぜか桜の花びらだけが色濃く舞っている。
 見知らぬ場所なのにどこか心地良くも感じられた。



『ここは……?』


『精神世界――“私”の心の中、と言った方が分かりやすいかしら』



 振り返れば一人の女性が立っていた。
 彼女はわたしと瓜二つの顔をしているが、年格好が三蔵達と同じくらいだった。





――これは幻術?





『残念ながらこれは幻術ではないわよ』


『!?』



 心の声が読まれているのかと身構える。けれど彼女からは敵意は感じられない。



『そんなに身構えなくても大丈夫よ』


『……あなたは誰?』


『その質問に意味はないわ。私はあなた、あなたは私――同じ1人の“銀鈴”なのだから』


『?』



 わたしと同じ銀鈴と名乗る彼女の言葉の意味は理解し難いものだった。しかし、反面妙に納得できる気もした。
 なにより、今のわたしの欠けた部分こそが彼女なのかもしれない。



『そんな難しい顔をしないで――それより、“私”は何か忘れてないかしら?』


『わたしは……そうだ! 三蔵がッ!! それに悟空も!!』



 彼女に言われてハッと我に返る。いつまでもここにいる訳にはいかないのだから。



『わたし早く戻らなきゃ!!』


『今の“私”ではあの子には敵わないわよ』


『それでも止めなきゃダメなの』


『そうね。だから“私”をここに呼んだの』


『え?』


『少しの間だけ私に時間を頂戴。大丈夫。ほんの少しだけ“私”は眠っていて』



 彼女が言い終わると舞っていた花びら目の前を覆い隠し、彼女の姿がその向こうで薄くなっていく。
 わたしは深い眠りに誘われるかのように意識を手放した。





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