泡沫人

□05
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――その後




――警察が掛けつけるまでの間に組から代理人が用意され、殺人の現行犯でしょっぴかれた




――久保田さんが手を挙げて「殺ったの俺なんスけどォ」などと言うもんだからあわてて口をふさいだ




――久保田さんだけはサツに手渡すなと、真田御大から命じられていたからだ








――第一取調室



「ここでお前と顔をつき合わすのは中坊ン時以来だな、誠人」


「相変わらずお茶菓子も出ないんだ」


「出るか、バカ。それにしても、南那までな……」


『私は何もしてない。何も知らない』



 俺と久保田に挟まれた形で座らされている南那は毅然とした態度を取っている。



「――おい、オッサン!! 南那さんが言う通り、俺たち関係ねえっつってんだろ!? なんでこんなトコいなきゃなんねえんだよ。もう容疑者はしょっぴいただろうが!!」


「……フン」



 この前会った葛西という刑事が鼻で笑うと、近寄って来たと思えば耳元でボソッと呟いた。



「どうせダミー叩いたって何も出やしねえだろ」


「……!!」



 図星を突かれるといざというとき反論できない。
 それに比べ、南那や久保田は臆した様子もなかった。



「――実際な、誰が殺ったかなんざどーでもいいんだよ。こっちが知りたいのはホトケさんのことだ」


『――刑事がそんなこと言っていいわけ?』


「そんなのこっちが聞きてえよ。なんなんだ、あのバケモノみてェなケムクジャラ野郎は」


「葛西さん、俺らホントにあの男と面識ないんだけど?」



 僅かな沈黙が降りる。
 それを遮ったのは南那の言葉だった。



『――オジサマ、私アレと同じの以前見たかも?』


「!? それはいつだ!!」


『結構前のことかな? パトカーの中央に転がってるのをチラッとね』


「おい南那、そこで何してた?」


『――散歩の途中にたまたま見えただけ』


「お前が散歩だぁ?」


『私だってたまには出歩くときくらいあるもん!』


「……まぁいい。それより、お前たち“W・A”って知ってるか?」


「――葛西さん!?」



 葛西は察したのか南那を問い詰めることを止め、本題に入った。

 そして、それに異を唱えたのはもう一人の刑事。
 確か新木と言ったか。




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