光差す旅路の先

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「三蔵一行はここから約7qの地点を北西へ移動中です」


「あいつらジープなんかでチンタラ移動してっから余裕で追いついたな」



 八百鼡からの報告に独角兒が軽い様子で返している。



「玉面公主からの指令は?」


「もっと刺客を送り込めだとよ。無意味だと思うがね、俺は」


「――当然だ!!」





――ダン!





 抑えようのない怒りに壁を叩きつける。



「奴らのせいで、どれだけの部下が犬死したと思っている? 数で攻めても無駄だとまだわからんのか!!」


「まぁ落ち着けって、王子様。だからこーして作戦会議してンじゃねーの」


「もー。ゆーじゅーふだんだなぁ。お兄ちゃんわッ!! オイラが達でパーッとやっつけちゃえばイイんだよ、そんなヤツら! ヒマすぎて身体がナマっちゃうよォ?」



 李厘の緊張感の抜けた声に幾分か冷静さを取り戻す。





――わかっている





――母上を救うには戦うしかないのだ





――だが一体誰の為に…?





「紅……お前まだ迷ってねェか? 玉面公主の言いなりになって、蘇生実験に加担することに」


「! ――この俺に迷いなどない……!」



 独角兒の言葉に見透かされた気がして思わず語尾が強くなってしまった。



「――紅孩児様」


「八百鼡」


「私に行かせて下さいませんか?」



 声を掛けられた方へ目を向ければ、意を決したような顔した八百鼡がいた。



「今までの様に正面から攻めたのでは三蔵一行は倒せません。私がおとりになります」


「……危険だ。ならん」


「何故ですか? この八百鼡、貴方様のお力になりたいのです……あの日の御恩をお返しする為に」


「――しかし!!」



 これ以上大切な部下を失いたくないという思いだというのに、八百鼡は尚も食い下がってくる。



「それに、私はこれでも紅孩児様お付きの薬師。“薬”と名のつく物ならば、毒薬、爆薬、何でも自在に扱ってみせます。お任せ下さい」


 八百鼡が見せる笑顔に言葉が続かなかった。
 八百鼡の力は充分理解してはいるし、信頼もしているからだ。



「……勝手にしろ」


「おにーちゃん、女のヒトには弱いンだカラぁ」





――三蔵一行の行動はひとすじナワでは測り難い





――何も考えていない様で何をしでかすか理解できない連中だ





「――無茶はするな」


「はい、紅孩児様」



 俺が掛けてやれる言葉はそんなものしかなかった。





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