光差す旅路の先
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■ ■ ■
――パキィン
「妖力制御装置が……!?」
「悟空!!」
悟空の妖力制御装置である金鈷が小気味良い音を立てて割れた。
慌てて悟空に近寄ろうとしたが、八戒に腕を掴まれて止められてしまう。
『すごい妖力……』
「駄目です悟浄、離れて…!」
溢れ出す妖力に悟空の姿が変わっていく。
妖怪独特の尖った耳、鋭く伸びた爪。そして、髪が幼かった頃のような長さになっていた。
その姿は禍々しいほどの妖力をまといながらもどこか神々しくもあった。
「悟空…――あれが」
「“妖力制御”の封印から解き放たれた生来の姿」
――大地のオーラが結集し巨石に宿った異端なる生命体
――“斎天大聖孫悟空”
「ははッ――それが貴様の真の姿か!! やはり化け物は貴様らの様だな!!!」
「……」
悟空の本来の姿を目の当たりしてもなお強気の姿勢を変えない六道。だが、一瞬にして六道に詰め寄った悟空によって地面に押し倒される。
「な…!?」
――速え……!!
悟空の目で追えないほどの速さに背筋がゾクリと寒くなる。
悟空と揉み合う六道だが力の差は歴然だった。法力の力によって守られている六道には妖怪ならば触れることができないはずなのだが、悟空は一切気にしていない。
悟空とて影響がないわけではないが、それよりも治癒能力が上回っている。
「くそっ……!!」
距離を取った六道は懐から札を取り出し悟空目掛けて放つが、悟空の目の前で燃え尽きてきてしまう。
「何ィ…!? 札を焼き切る程の妖力を放っていると……!!」
――バキィ
「がッ…!!」
悟空の拳が六道の頬を捉え、六道は地に倒れた。
そこからは一方的だった。六道に馬乗りのなった悟空がただひたすら殴り続けている。
「…マジかよ……」
――三蔵から話にゃ聞いていたが
――あそこまで凄まじいキレ方だとは……
その光景に動くことも出来ずただ見ていることしか出来なかった。
「感心している場合じゃないですよ」
「八戒」
「……まだ息があるんです! 雨に体温を奪われてる。出血だけでも止めなきゃ……!!」
「どうするんだ?」
「気功で傷口を塞ぎます。急所を外しているだけまだマシかも……」
八戒は掌に気を集中させると、三蔵の傷口を塞いでいく。
そのお陰で多少三蔵の血色も良くなり、呼吸も安定する。
「――三蔵は僕が何とかします。悟浄は悟空を止めてください」
「ああ――だけど、どーすりゃいいんだよ!?」
「僕だって知りません、三蔵でないと…――でも、今の悟空は明らかに正気を失っている――このままじゃ、あまりの強大な己が妖力を抑えきれずに全てを破壊するまで暴走を続けてしまう……!!」
『――悟空』
今まで茫然自失としていた銀鈴がふいに悟空の名を零した。
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