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□D状態
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「はぁ…」

つまんない一人で歩く帰り道。
今日は体調不良だからってノボリが無理矢理早退させた。
ぼくは全然元気なのに。
ぼくが一人で帰るのもすごく心配してた。
涙がでるのは多分重度の花粉症だと思う。
ノボリは心配性だなーなんてのろのろと歩きながら考えて、たまたま横にあったショーウインドーに意味もなく視線を投げる。
爽やかに笑うカミツレちゃんのポスターの横には寒くもないのに顔面蒼白、笑顔が引き攣ったぼくがいた。
全然たいしたことないって思ってるけど、見た目がこんなんじゃ流石に皆心配しちゃうよね。
意識したら急に寒気までしてきて、さっさと帰ろうと視線を進行方向へ戻した。
病は気からってほんとなんだね。
あーあ。
いやになっちゃう。
せっかくぼくとノボリ二人が早番で、早く帰れる日だったのに。
ぼくだけこんな昼間に帰って、ぼくの分の仕事をするためにノボリは夜遅くになっちゃうんだ。
一緒に帰って夕飯食べてノボリとくっついたりちょっとエッチなことなんてしちゃったりとか考えてた朝のぼくを殴りたい。
多分こんなことになってるの、そういうこと考えて薄着でぼーっとしてたから。
ああ、なんだか思い通りにならないなぁ。
ため息をつきつつも段々重くなってきた気がする足を進める。
赤信号すら煩わしくって体調のせいじゃなく笑顔が引き攣る。
この道路に飛び込めば体調不良とか仕事とか嫌なこと考えなくてもよくなるかな。
そんな馬鹿なことを考えて周りをみたらすぐ横に巡回中の警察官が立ってて、いや別にやらないけども、そういうことすらさせてもらえないんだなってまたため息が出た。
ままならないってこんな感じのことを言うんだろうね。
救いようのない終わり方する小説みたいな。
どうでもいいけど、実はぼくハッピーエンドの物語よりバットエンドのリアルな話の方が好きなんだよね。
読んでて絶対そんなうまくいく訳無いって思っちゃうし、絶望してる主人公たちみてるとなんだかスカッとする。
絶対同意してもらえないからノボリには言わないけど。
自分でも思春期に夢見がちな少年少女がかかる病気をこじらせてるって思うんだけど、もうそうイメージしちゃったらそうとしか楽しめないんだよね。
なんだかこういうのもうまくいってないや。
人生、生き方?そんな感じのがうまくいってない。
唯一の成功はノボリの弟に生まれたこと。
ままならないなかでぼくが道を踏み外さずにやってこれたのはきっとノボリのおかげ。
あ、青に変わった。
先を歩く警察官に心の中で敬礼をしてまたのろのろと歩きだす。
こんなに道のり長かったかな。
歩くのすら面倒臭くなっていっそ座り込んでしまいたくなる。
やけに青々とした空や草木が生気に満々ていて、ぼくの歩く気力まで養分と一緒に吸い取られてく気がした。
踏み締めるアスファルトがそんなわけないのにフワフワしてる気がする。
ほんとに体調悪くなってきたなぁって体調管理の出来ない自分に嫌気がしてきたころ、やっとマンションが見えてきた。
これから3階まで階段を上るのか…。
本格的に体調不良っぽくなってきたんだけど、こういうのもままなら、以下略。
もう頭ボーっとしてきて考えるのも辛い。
大変、今ぼく笑えてないかも。
ノボリ帰ってきたら心配しちゃう。
ぐだぐだと階段を上りながら仕事の事を考えてみる。
階段上る嫌気を紛らわそうとして考えるのが仕事の事って、ぼくは相当毒されてる。
一段上がるごとにカン、カンって足音が響いて頭の中に反響してる。
このままぼくの灰色の脳細胞は耳障りな音で破壊されてくんだ。
ありもしない妄想をしながら最終的に仕事の事を考える。
意味もない堂々巡りで無駄な労力を使ってるなぁなんて自分の事ながら馬鹿馬鹿しくて笑えてくる。
そんな大好きな仕事すら最近さぼってばっかりな気がする。
ちゃんと仕事した記憶がここのところないや。
気付いたらもう夕方になってたり、お客さんの為に!ってなにか考えて、考えて考えて結局何もしないで考えた事さえ忘れちゃう。
それで自己嫌悪してずっとそれを引きずって新しい仕事が手につかない。
それでも皆何も言わないのは皆が優し過ぎるからかな、それともぼくがサブウェイマスターだから?
庇って優しい言葉が欲しいんじゃ無くって、寧ろ思いっ切り叱ってほしい。
甘やかすから付け上がる。
なのに何かうまくいくと褒めたりするからさらに天狗になって逆上せあがる。
そんな悪循環。
はぁ。
ため息しか出て来ないや。
こんなに病んでるのはきっと風邪のせい。
そう!もう風邪でいいや。
鬱々としてるのは全部風邪のせい。
花粉症なんかじゃないよ!
さっさと階段上りきって部屋に帰って寝てしまおう。
いつものお薬も飲まなくちゃね。
ノボリが帰ってきてきっと晩御飯を作ってくれる。
そのいい匂いに包まれながらノボリの優しい声で目覚めるんだ。
物語はバットエンドが好きでも現実は断然ハッピーな方がいいよね!
今日中に風邪なんて治しちゃって明日はノボリと一緒に出勤しよう。
ノボリといればままならない人生でもぼくはハッピーだもの。
階段上ってたって、ノボリと話してれば耳障りな音は聞こえない。
赤信号とか踏切で立ち止まったって楽になれること考えなくていいくらい幸せになれるんだ。
だからノボリ、早くぼくを起こしに来てね。
じゃないとぼく、ずーっとずっと寝てるから。

ずーっとずーっとね。


END



厨二病&若干病んでる混沌としたクダリさん。
意味不明なのが書きたかった。
誰でも一回や二回、百回や二百回死にたいって思ったことあるよねって話。




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