文章

□夢中淫行眠姫
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ノボリさんビッチにつき若干注意!

「今日は誰と寝てきたの」
「誰でしたかね。顔も覚えておりません」
「ふーん」

ノボリはなんだかおかしいみたい。
おかしいっていうか、痛々しい。
帰ってくるのは大体夜遅い時間で、朝はしっかり整えていった髪や服装がぐちゃぐちゃになって帰ってくる。
獣くさい匂いとか、むせ返るような香水の香りをつけて気だるそうに家のドアをくぐる姿はなんだか見ていて悲しくなる。
なんでそんなことしてるの。
意味わかんない。

「シャワー使いますね」

ノボリはしわくちゃになったコートを脱ぎながらバスルームへ歩いてく。
脱いだ時に見えた手首と首元に青あざが出来てて、耐えきれなくなってぼくはとっさに手首をつかんだ。

「痛いですよ。クダリ、なんですか」

ちょうど青あざができているところを掴んだみたい。
ノボリが痛そうに顔をしかめた。
帰ってきた直後の人形みたいな顔よりは今の方が人間味がある気がする。
掴む手を離さないまま聞いてみる。

「ノボリ、楽しい?」
「・・・何がです」
「こういうこと」

手首を掴んだ手に力を少し込めるとノボリは小さく呻き声をあげた。
今日の相手にもそんな顔を見せてたんだよね。
それともその時は痛くされて喜んでたの?
頭の中でぐるぐるして気持ち悪い。
怒りたくもないのにイライラしてきて無償に細い手首を折ってやりたくなった。

「別に」
「なにそれ」

意味わかんない。
ならなんでそんなことしてくるの。
性欲処理ぐらいならぼくがいるのに。
自分を大事にしてない。
そのうちきっとノボリはダメになる。

「自分を大切にして」
「おっしゃる意味がわかりません」
「そんなに自分を痛めつけて、何が楽しいの」
「そのような気はございませんが?」
「他人の慰み者にされてるじゃない。その人達のこと好きなわけじゃないんでしょ」
「あたりまえじゃないですか。」

あたりまえっていった。
ぼくが呆然としていると、緩んだぼくの手からスルリとノボリが離れて行った。
そのまま手首の青あざに口付けて、うふふとつまらなそうに笑った。

「性交に愛情なんてないんですよ」
「・・・ノボリの自論?」
「ええ、そうとも言えますね。愛なんてなくても気持ちいいものは気持ちいいし、私も相手も満足できる。とてもいいことでしょう?」

自分がされて嬉しいことは相手にもしてあげなさいって教わったでしょう?
バスルームに行くためかシャツのボタンを外しながらノボリは話続けてる。
完全にぼくのこと馬鹿にしてる。
露わになってく肌には鬱血したあととか引っかき傷とか、縛られたあととか歯型とか、見るに耐えない。
それを見せびらかすみたいにぼくの前にノボリはしゃがんで滅多に見せない口角を上げた笑顔を見せた。
それが作りものだってことぼくは知ってる。

「ゴムさえつけて下されば誰でもお相手いたしますよ」
「・・・ばっかじゃないの」
「ふふ、そうですね」

何笑ってんだよ。
ぼくノボリみたいになっちゃう。
笑顔なんて今のぼくにはできそうにないや。

「誰でも?」
「ええ、誰でも」

それを聞いた瞬間頭の中がまっ白になった。
きっとそうやって何人もの人とそういうことしてきたんだ。
ぼくの自慢のお兄ちゃんだったのに、誰かに抱かれてこんな風になっちゃったんだ。
誰かがつけた右肩のキスマークを思いっきり掴んでそのまま床に押し付けた。
ふっとノボリが息をはいて、その後背中が痛いと呟いた。
もうそんなことどうでもいいや。

「じゃあ、ぼくでも構わないんでしょ?」
「・・・ええ、そのかわりちゃんと付けてくださいね。こんなことのためにお腹が痛くなるだなんて馬鹿げていますから」
「ほんと、馬鹿げてる」

どうしてこんな風になっちゃったんだろ。
ノボリはいつもカッコ良くて、潔癖。
そうだったのに。
愛撫するだけで身を捩らせるような身体じゃなかったと思う。
全部全部前みたいに戻ればいい。
そのためならぼくも禁忌を犯したっていいや。
僕がこんなに必死になってノボリのこと抱きしめてるのになんでこんなに余裕で僕の背中に手なんか回してるんだよ。

「大好きです。クダリ」

優しく言ってくるノボリの声が柔らかすぎて、こんな状況なのを泣きたくなった。
ああ、もう。
そういうことはさっきみたいな作りものみたいな声で言ってよ。
じゃないと本気になる。
止まらなくなる。
気持ちを隠しきれなくなる。

「ぼくも、ノボリ」

周りのキスマークに負けないようにノボリの真っ赤な唇にキスを落とす。
さっきまでとは雰囲気がかわったノボリはなんだか可愛く見えて仕方ない。
違う人に抱かれていたなんて考えられないくらい、初心に顔を赤くしてこっちを見る姿は人形のようだった姿が嘘見たい。

ほんとに前みたいに戻ってくれればいいのに。

ああ、そうだ目を瞑っていればいいんだ。
そうすれば見たくないものは見なくていいし、耳から聞こえてくる声は大好きなノボリの善がり声なんだから。

「クダリ、私初めてなので優しくしてくださいね」
「嘘ばっかり」
「本当ですよ。本当に好きな人と抱き合うのは、初めてですから」
「え・・・」
「貴方とこういうことをしたくて今までの人で練習してきたんですから」

目をそらしなが顔を真っ赤にしていうノボリは嘘は言ってないみたい。
それを確信した瞬間、ぼくは本当に頭が真っ白になった。


END

この後ノボリさんはクダリさんにべったりになります。
クダリさんのキスでビッチから純情へと目覚めるノボリさんマジお姫様!





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