文章

□犯罪許容
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「いただきます」
「あら、クダリくんって偉いのね」
「え?何が」
「今いただきますってちゃんと言ったでしょ」
「うん」
「なかなかファミレスでまで言う人いないじゃない」
「そんなことないよ」
「そうかしら。あたしの中では言わない事が常識よ」
「常識って・・・。兄さんが怒るんだよ」
「ああ、確かにノボリくんはそういうタイプよね。生き物に感謝して食べなさい!みたいな感じで」
「そうそう。まあ、全然食材になった生き物に感謝なんかしてないんだけどね」
「あら、そうなの?てっきりノボリくんの教えに従ってるのかと」
「ノボリ兄さんに言われたから言うようになったってのはあるけどね。なんていうか、勝手でしょ?」
「勝手?」
「自分達の都合で殺しておきながら命に感謝して食べましょうだなんて、自分勝手すぎ」
「まあ、それを言ったら何も食べられないじゃない」
「そういうこと。ほんとに命について考えるなら菜食主義者になるべき」
「それは極論じゃない。それに、だったらどうしてクダリくんはいただきますっていうの?」
「感謝してるからだよ」
「矛盾してるわ」
「してないよ。だって感謝してるのは兄さんとか業者の人に対してだもの」
「ノボリくん達に?」
「人殺しは犯罪だけど、動物を食肉処理するのは罪に問われないでしょ?それは僕らが生きてくのに必要だから世間に許容されてるだけ」
「まあね、私たちが食人文化を持っていたら殺人すら許されてたかもね」
「そう。殺害にかわりはないのにおかしいでしょ」
「ええ、それは解るわ。殺してる側に感謝してるのはどうして?」
「僕の代わりに罪を被ってくれるから」
「罪?」
「僕の代わりに動物を殺して食べられるようにして、美味しく味付けしてくれる。僕は何もせずに美味しい物を食べられる」
「自分は何も罪を犯さずに?」
「そう。何も手を汚さずに僕は美味しい物だけを食べれる。だから僕はいただきますっていうの」
「ふーん。クダリくんがそんな理由で言ってたなんて知らなかったわ。意外ね」
「実はそうだったんだよ」
「ふうん。今度ノボリくんにも聞いてみようかしら。いただきますって言う理由」
「案外僕より複雑に考えてるかもよ」
「ふふふ、そうかもしれないわね。あ、そろそろ食べましょうよ。すっかり話し込んじゃったわね、冷めてるかしら」
「そうだね。せっかくステーキ頼んだのに冷めたら硬くなっちゃうね」
「そうね。私ももう少しで休憩時間終わっちゃうわ」
「じゃあ気を取り直して、いただきます!」

END

一番の罪は無知なんでしょうけどね。
みそラーメン食べながら思っただけ。




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