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□あなたも見てますか?
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「ク、ダリ?」
私は声を出すことが精一杯でした。
なぜ私が拘束されているのかも、クダリが何も言わずソファに座ってこちらを見ているのかも、私には分かりませんでした。
もしかしたらクダリは座ったまま意識を失っていて、押し入ってきた泥棒が私を拘束したのではないか。
そんなことを考えて見ますが、期待は淡くもクダリの一言で崩れ去りました。
「あの娘、だれ?」
呟くような問いかけに私は何のことかわからず私の吸い込んだ空気がヒュッと喉でなって静まり返った空気を震わせました。
「ねえノボリ。ぼくはノボリだけなのに、なんで僕だけ見てくれないの。あの娘ってだれ。挑戦者。彼女。友達。だれ?ぼくはノボリだけ。なのにノボリはなんで」
そう言って無表情に泣いたクダリを私は見たくなくて、顔を伏せました。

お題:ひよこ屋様より



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