始まりは突然に

□始まりは突然に
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笠松さんが着替えにいってる間


(あっボール。)


私は近くにあったボールを手に取ってシュートをしていた。


無我夢中にシュートを打っていたため、笠松さんが戻ってきたのに気付いていなかった。


(久しぶりにシュートしたなー。)


満足して元の位置に戻ろうとすると


「バスケしてたのか?」


「え?」


まさかいると思わず驚いて声のする方をみた。


「フォームが綺麗だったからな。初心者じゃないだろう?」


(さすがに隠せないか。)


「はい。中学までしてました。」


「いまマネージャーだよな?プレーしないのか?」


「・・・できないんです。」


笠松さんは何かを察してくれたのか私の言葉を待って何も聞いてこなかった。


「笠松さんを知ったのは妹がファンだったからなんです。」


「ファンって?」


「もちろん笠松さんのですよ」


えって顔をしてる笠松さん。


「そんな驚かなくても。雑誌載ったりしてるんだからありえますよ」


照れているのか少しうつむいていた。


「まぁそーゆうことで、去年の試合も見に行ってました。妹と二人で」


「見てたのか。あの試合」


辛そうな顔をしているのを見ていられなかった。


何も考えずに手が勝手に笠松さんの頭をなでていた。


「・・・・。」


笠松さんは驚きすぎ、何も言葉が出なかったのか私の方を見て口をパクパクさせていた。


「あっ・・・すみません。」


自分がしたことに驚き、急いで手を引っ込めた。


「いや・・・あの・・・」


気まずい雰囲気が二人の間に流れてしまった。


「えっっと・・・今日はもう帰ります。」


気まずさと恥ずかしさにたえれず立ち上がると


手を掴まれた。


「・・・え」


手を掴んでる本人を見ると顔が赤い。


「・く・。お・・ぃ・・から」


小さくて何言ってるか分からず


「えっ?」


聞きなおすと怒ったように、遅いから送ると言ってくれた。


(さっきまで気まずかったのに、遅いからと気遣ってくれる。梓が好きだったのがわかるな。)


そんなこと考えていると、何故か胸が痛かった。


「いくぞ。」


帰る支度ができた笠松さんが来てくれた。


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