其ノ壱

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ある日の朝餉あと・・・



私と千鶴ちゃんは、大量の湯呑を盆にのせて広間へ向かった。



『お茶、入りましたよ。』



「失礼します。」



襖を開けると、みんなが嬉しそうな顔をしてこちらを見る。



『はい、井上さん。』



「すまないね、黎音くん。キミたちにこんなことをさせてしまって。」



目を細め優しい微笑みを浮かべる井上さん。



私の癒し顔。










「ちょっと、黎音ちゃん。僕にも早くお茶ちょうだいよ。」



『・・・・重いですよ。総司さん。』



いきなり背中に寄りかかる総司さん。



『・・・はい、どうぞ。』



あまり熱くないお茶を渡す。



「さすが、僕の小姓だね。」



満足そうに微笑む彼。






―――目が離せなくなるのは・・・どうして?









「八木さんたちにも世話になったが、この屯所もそろそろ手狭になってきたか。」




土方さんが腕組みをしながらため息を吐いた。



「まあ、確かに狭くなったしなぁ。隊士の数も増えてきたし・・・」



新八さんはお茶をすすりながら頷く。




「隊士さんの数は・・・たぶん、まだまだ増えますよね。」



千鶴ちゃんも小声で呟いた。




今、平助が江戸へ出張に出て、新隊士の募集を募っている。




隊士が増えるのは喜ばしいことだが・・・残念ながら、屯所の広さには限りがありますからね。



そして、特に割を食っているのは、小部屋を集団で使う平隊士の皆さんだ。



「広いところに移れるなら、それがいいんだけどな。雑魚寝している連中、かなり辛そうだしな。」



平隊士の皆さんは、毎晩すし詰め状態で、雑魚寝を強いられている。



私や千鶴ちゃんは訳ありで個室を使わせてもらっているのだから、申し訳ないかな。








「・・・黎音ちゃん、僕の部屋に来る?」



『―――は!?(今、なんて言いました?)』



耳元で小声で呟く総司さん。
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