其ノ壱

□12
1ページ/6ページ






あのあと、山南さんが広間にやって来た。



見た感じさして変わりないけれど・・・気が禍々しいものに変わっていた。



左腕も治ったようで、握ったり・開いたりを出来るまで回復してた。



でも“羅刹”は、日光に弱いので【死んだことにすればいい】との彼の意見で、この事は解決した・・・。



――――そして





このあとから、彼は薬の研究を進めることになった。















慶応元年閏五月



西本願寺に屯所を移転してはや3ヶ月・・・。



『・・・・やっぱり、広いな〜。』


「そうですね。」


毎日歩いてれば、さすがに慣れるのだけど・・・





『広すぎて、総司さん捕まえられないよ――!!!』



“豊玉発句集”持って、逃げたりとか・・・・やめてほしい。





「あはは、頑張って黎音ちゃん。」



千鶴ちゃんは苦笑いを浮かべ境内へ歩いた。




何故、私たちが境内のほうへ向かってるかというと



『山南さーん、食事の準備が出来ましたよ!!』





「あぁ、キミ達でしたか。ありがとう。」



そう、山南さんを呼びにきたのだ。



「風が・・・暖かい。」



千鶴ちゃんが空に手をかざした。



「えぇ。・・・まぁ、今の私には風より陽射しの強さの方が癪に触りますがね。」




穏やかな笑顔の裏に、皮肉が込められていた。




「そう・・・ですか?」




―――・・・彼は、西洋の鬼の血を体内に入れ己もまた、異形者になったのだ。



日光に弱くなって当たり前。



私の場合、混合だったから陽射しに弱いわけではない。




山南さんは日陰を探しながら歩いて行った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ