其ノ壱
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あのあと、山南さんが広間にやって来た。
見た感じさして変わりないけれど・・・気が禍々しいものに変わっていた。
左腕も治ったようで、握ったり・開いたりを出来るまで回復してた。
でも“羅刹”は、日光に弱いので【死んだことにすればいい】との彼の意見で、この事は解決した・・・。
――――そして
このあとから、彼は薬の研究を進めることになった。
慶応元年閏五月
西本願寺に屯所を移転してはや3ヶ月・・・。
『・・・・やっぱり、広いな〜。』
「そうですね。」
毎日歩いてれば、さすがに慣れるのだけど・・・
『広すぎて、総司さん捕まえられないよ――!!!』
“豊玉発句集”持って、逃げたりとか・・・・やめてほしい。
「あはは、頑張って黎音ちゃん。」
千鶴ちゃんは苦笑いを浮かべ境内へ歩いた。
何故、私たちが境内のほうへ向かってるかというと
『山南さーん、食事の準備が出来ましたよ!!』
「あぁ、キミ達でしたか。ありがとう。」
そう、山南さんを呼びにきたのだ。
「風が・・・暖かい。」
千鶴ちゃんが空に手をかざした。
「えぇ。・・・まぁ、今の私には風より陽射しの強さの方が癪に触りますがね。」
穏やかな笑顔の裏に、皮肉が込められていた。
「そう・・・ですか?」
―――・・・彼は、西洋の鬼の血を体内に入れ己もまた、異形者になったのだ。
日光に弱くなって当たり前。
私の場合、混合だったから陽射しに弱いわけではない。
山南さんは日陰を探しながら歩いて行った。