「俺の子を孕むか、俺の血肉となるか、選べよ」
□悪魔の囁き〔5〕
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単純な私は、それを見ただけで先ほどのムカムカが吹っ飛んだ。
リイルさんが車掌さんにお金を渡し、乗り込んだ。
(車掌さんは顔がマフラーで巻かれてて見えなかった。私たちのこと、見えたんだろうか…)
ボックス席にリイルさんと向かい合わせで座り、流れ出した窓の外の景色を見る。
ひたすら森。
森、木、林、木。
「………」
もしかして、リイルさんと住んでいるあの家、すごく辺境の地?
とても1人では出掛けられないな、と思った。
私はずっと窓の外を見て、リイルさんは……。
「…なんですか?」
ずっと見られてる。
熱視線を感じた。
「ん…?アイコってさ」
「? はい」
「……なんでもない」
「えっ?」
焦らすの?
聞き返そうとしたけど、なんだか悔しくなったので、スルーすることにした。
……本当はとても気になるけど。
しばらく互いに無言のままで。
長めのトンネルを抜けたら、自然ばかりだった景色から。
「街だ!」
茶色い街並みが見えて、子供の様に喜んで窓から身を乗り出した。