妄想の産物

□メリークリスマス2012
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冷たい空気を吸い込む。
夜の冷気はコートと服の間にまで潜り込んで震えを呼ぶ。
手袋なしの手をさすりながら待つこと30分、カップル達が見守るなかイルミネーションが色を変えた。


「おっせーよ、くそ」


ぼそりと出た悪態は誰に聞かれることもなく白い息になって空に帰った。さよなら水蒸気よ。

なぜ俺は待たされているのだろう。六本木のでっかいビルを前に通りすぎて行く恋人達はいつもより浮かれて見えた。


「だーれだっゴフッ」


後ろからだった。
周囲の視線も気にせず腹パンをかまし崩れた所で背中を足蹴にする。謎の息が聞こえる。


「おっせーよくそ」

「女の子に腹パンって何事大串くううん!?」

「寒くていらいらしてんだよ連絡なしに30分も待たせやがってテメーはァア」

「この人DVです助けてー!お巡りさーん!」

「俺がお巡りさんだ」

「マジか、世も末だな」


軽い漫才になりつつあるのをこいつの頭を叩いて黙らせた。


「さっさと行くぞ」

「おっけー任せろ兄弟」


もう一回叩いた。







クリスマスのイベントなんてどうせ仕事で潰れると思っていた俺は23日に近藤さんに呼び出され突然の休暇を与えられたのだった。
なんだかにやにやしていた。気持ち悪かった。あれ、これ作文?


「なんでお前に休暇潰されなきゃなんねーんだ」

「暇な奴副長しかいなかったんすよーさすがにクリスマス一人で過ごしたくないでしょ?」

「のんびりさせろよ俺別にクリスマスとがどーでもいっ」

「黙れ小僧」

「あらーそこのカップルさん!良かったらこの店で」

「カップルじゃねーよお前の目マジで節穴にすんぞコルァ」

「やめて土方!土方の目の方が瞳孔かっ開いてるから!それはもう冗談じゃないくらいに!」


逃げる店員をよそに今日はどういう日かを再確認させられてしまった。


「どうしよう今日お前といると周りはカップルだと思うようだ」

「知っとるがな」

「お前だってまさか…あ?」

「だから、そんなこと知っとるがな」


沈黙、からの、こいつの不適な笑み。


「ほれ、カップルらしくイルミネーション見るよ土方」


手をつかまれ、そのまま歩く。つまり手を繋いでいる?心底嬉しそうに歩くこいつはよく見たらいつもより可愛い。


「近藤さんに頼んでよかったー」


いつの間にか冷たかった手は火照っていた。





END







メリークリスマス。
東京駅のイルミネーションは残念でした。見たかった〜

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