Lunatic

□第七話
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「この書架かぁ…、よりによって一番大きい書架とは悪意を感じるよ〜アストの馬鹿〜」
「あの…大丈夫ですか?手伝いましょうか?」

レインに話しかけたのは唯一アストの家に雇われている、書庫の管理者の少年だった。

「ん?大丈夫、あたしいっぱつで当てるからちょっと下がってて〜」
「は、はぁ…」

少年が数歩下がったのを確認すると、レインは書架に向かって一歩踏み出しながら握りこんだ拳を「ていっ」と言いながら叩き込んだ。
そんな可愛らしい声とは相反して書架はグラグラと揺れながら木の軋む音を立てている。
音が止むと、一冊の本が頭上から落ちてきた。
そのまま床に本が落ちると、レインは拾い上げて、少年に渡す。

「…書架、大丈夫でしょうか」
「気にしない気にしない〜。さ、開いてみて〜」

少年が手渡された本を適当に開く。

「あの…これ…」
「どう?マターの本でしょ!そうに違いないよ〜」
「これ、太陽と月の伝記です」
「えぇぇ!?そんなはず…ほんとだ〜」

少年は申し訳なさそうにぺこぺこ頭を下げる。
そんな管理者には目もくれずにレインは頭を抱える。

「あたし、そんなにシャイナーになりたかったのかなぁ〜。自分の力すら満足に使えないなんて精霊長失格だよ〜」
「精霊長失格だぁ?それを言っていいのはルナを守れなかった時だけじゃないのか」
「…あれ、アスト帰ってくるの遅かったね〜」

アストは壁に寄りかかって偉そうに腕を組んでいた。

「連れて帰ってきたからお前早く食堂に行ってやれよ、そこにいるからよ。どうせお前も飯食ってないんだろ?」
「あ、うん。でもご飯作ってないんじゃないの〜」
「…そういやそうだな。マターは俺が調べておくから、適当に作ってルナと食え」
「ええー!あたしも探すよ〜」
「またパンチでもして失敗したんだろ?能力はブレイズに渡してるんだから使えるわけないだろうが」
「やっぱそうだよね〜…。じゃあマターのこと、よろしくね〜」

レインは肩を落としながらルナの居る食堂に向かった。
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