短編 小説

□少女の憂鬱
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いつも同じ空を見る。


真っ青で、白い雲が浮いていて、





それでいて、憎たらしい。





窓から見える風景なんて大していつも変わりない。


いつもこの窓側の席から授業を受け流し、空を仰ぎ見る。



「先生、調子が悪いので保健室行ってきます」



返事も聞かずに教室を出る。


目的地は保健室ではなく屋上。


戸を開けると真っ青な空に吹き抜ける心地よい風。


寝転がってそっと瞳を閉じた。







夢を見た。


思い出したくない夢だ。




     つまんないのよアンタって。


 いちいち都合良すぎだよ。


     周りの男子が迷惑してんの。


 最低だよね、死んでくれない?




やめてやめてやめて。


何もしてないじゃない。


ただ私は皆と仲良くしたかっただけ。


なのに…







思わず瞳を開けて辺りを見回す。


そこにはいつもの屋上。


目尻が濡れているのに気づく。


泣いていた。


何もかもがどうでもいいと思った。


相変わらずクラスメイトには避けられ、裏で殴られたり蹴られたり。


日常茶飯事だった。


だけど辛かった。


辛かったからある決意をしたんだ。


死のうかな。


飛び降りようか、なんて思って足を軽々前に進める。


しかし、誰かが私が進むのを腕を掴んで阻んでくる。



振り返ると整った顔立ちをした男の子…確か同じクラスの越前…と言ったか。



「誰、離して」


「やだ」



相手…越前は離す気など更々ないらしい。


でもなぜ?


今まで話したことなんて一回もないのに。



「離してよ、何しようと私の勝手でしょ」


「死ぬ気だろ?」



迷いなく頷く。


恐怖も、思い残しも、何もない。



「死なれたら困る」


「…意味、わかんないし…」



やめてよ。


変に期待しちゃうじゃん。



「期待していいよ」


「は、何言って…」


「全部声に出てるんだけど」



自分のした言動に全く気が付かなかった。


不覚。



「ねぇ、死なないでよ」


「随分な綺麗事ね」



止める気なんかないくせに。


所詮は綺麗事じゃん。


今まで信じてきた人たちは、綺麗事を並べていた偽善者だった。


だから随分前に決めたんだ。



期待なんてしない、しちゃいけないって。



越前が妖しく口角を上げて話す。








「綺麗事な訳ないじゃん



      俺は、



    アンタのことが好きだからね」











fin.

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