短編 小説

□小悪魔
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「ねーちゃん!」


「あ、金ちゃん」



私の元に相変わらず元気いっぱいの金ちゃんが寄ってきた。
小柄なのに体力や技術は3年生の先輩たちに劣らない。
…まあ金ちゃんの場合、技術っていうかありのままの野生児っぷりだけど。



「どうしたの?」


「ねーちゃんと話しにきたんや!」


「あれ、部活は?」


「白石が怒っとったけん、ねーちゃんと話したかったんや」



あーあ。
さぼってきた、って意味だよね。
白石部長、疲れ様です…



「だめじゃん、部長が心配してるよ?」


「…ねーちゃんはワイと話すの嫌なん?」



うぐっ…
こーいう攻撃には弱いんだよね…
金ちゃんは純粋で下心とか全く考えられないんだよね。
だからこれも素なんだろう。



「嫌じゃないよ?」


「じゃあワイとお話ししよーや!」



無邪気に笑ってくれる。
…まあ白石部長には悪いけどお話してようかなあ。



「うん、良いけどあんまりさぼっちゃだめだよ?」


「おん、ねーちゃんと話したら部活出る!」



あ、ちゃんと部活の事も考えてたんだね。
白石部長には怒られると思うけど。
毒手だね…



「なぁ、ねーちゃん」


「なあに?」





「子供ってどーやってできるん?」





「げほっ…げほっ…」



何てこと言いだすか…
誰だよ変な事吹き込んだの…
監督とか財前君とかかな…



「なぁ、ねーちゃーん?」


「え!?あ、あははは…」


「ねーちゃんも知らないんか?」


「う、うんうんそうなの知らないの!」



辛い。
嘘ってこんなに辛いんだね…
あはは、改めて思ったわ。



「じゃあじゃあ、キスって何の意味があるん?」



金ちゃん…
私の知ってる金ちゃんはもういないのね…
とりあえず白石部長にあとで言おう…



「え、えっと…好きな人とするものかな…?」



健全な中学生ですし、キスくらいなら知っててもおかしくないか…
私がショックなのは金ちゃんが知ってたって事なんだけどね。



「へえ、そうなんか!」



あーあ…
頭が働かないよ。
何かこの短時間に色々ありすぎだから。



    その瞬間。


 私の唇に、


    柔らかくて温かいものが


 触れる。




「…え?」



    何 が 起 こ っ た ?



目の前には満面の笑みを浮かべる金ちゃんがいて。
私の唇に触れたものは…



  金 ち ゃ ん の 唇 ?



「ワイはねーちゃんの事大好きやで!
ほな、ワイ部活行くわ。
ねーちゃんありがとなー!」



私の返事なんか聞かないで笑顔で走って行った金ちゃん。
いやいやいやいや!
え、キスされたんだよね…?



「もう…小悪魔だな…」



金ちゃんに心を奪われそうな私がいた。





fin.

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